CROSS†CHANNEL

CROSS CHANNEL
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FlyingShine 2003-09-26
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実に・・・実に面白かった
睡眠時間を激しく削ることになって今週はフラフラでした。
正直死ぬかと思った。
凄い勢いで読んだので疲れ目も凄かった。
でもプレイするのが止められなかった。
もしこれからプレイされる方に一つだけ言える事があるとすれば「連休にやれ」くらいです。
ラノベ読みで金銭的余裕がある人は、プレイしてみるのも多いにアリのような気がしますね。主人公や他のキャラクターの魅力や世界観の魅力、描写の秀逸さなど含めて、

  • 「フルカラー挿絵」
  • 「音声/映像エフェクト」
  • 「エロシーン付き」

の「非常に良くできたラノベ」という方向で認識すれば、エロゲに手を出さないラノベ読みの人でもガッツリと楽しめるような気がします。
私の場合、キャラクターの声を消してプレイしました。・・・ラノベ読みとしてその方が妄想力が働くんで・・・。

ちなみにストーリー周りとかはネタバレに繋がるので細かい部分には触れないようにしますが、やっぱりネタバレ危険なので未プレイの人は以下を読まれる場合には注意して下さい。

とにかく

先日のエントリでちょっと書いてみたけど、

CROSS†CHANNELフォトショップのレイヤーを積み重ねるような作品構成になっているのかな。

これはまあその通りだったのかな〜と思います。

正直最初は

「??〜何が起こっているのか分からない〜??」と「主人公は純粋な痴漢/変態!?」という印象で、ぶっちゃけますと、

「なんだよ〜。人気のエロゲなのにこんな性格なのかよ〜。地の文章はロミオなんで良いけど・・・」

って感じだったんですよ。この印象が「CROSS†CHANNEL」の表面を一枚なぞっただけだと知らずに。

ところが・・・

2週目に突入した辺りから印象はどんどん変わりましたね。
断片化された物語の欠けたピースを埋めていくかのように新たに開示される情報は、1周目に仕入れた知識を上書きしつつも塗りつぶす事無く重なりあって、別の印象を持ち始める。世界の色が変わる、キャラクターの姿が変質する。
それは良いとか悪いとかという単純な変化ではなく、もっと深みへと沈んでいくようなものじゃないかと今では思う。
ここまで話を進めてしまうと、もう止まれない。物語の終着点を求めて、あるいはラストシーンに向かって駆け抜ける事をゲームに急かされているかのように感じました。

最終的に

感じたのはやっぱり、なんて繊細なんだろう、という事でしたね。やっぱりこれも先日書いたけど、

なんて傷つきやすいんだろうか。作り手も、語り手も、きっとプレイヤーとして想定された人まで硝子細工のように繊細に違いない。これはまさしく壊れもの注意。

この「CROSS†CHANNEL」というゲームは傷だらけだと思った。一人として傷を負わないキャラクターはいない。でもその傷こそがキャラクターをもの凄く人間臭くしているように思う。
最初の印象の「ただの変な人」は徐々に「本当に変な人」になり、やがてそれを一回り超えて「もの凄く人間的」という所に落ち着く。
はみ出し者のはずの彼らは実は「誰の中にでも多かれ少なかれ潜む衝動」をそれぞれ背負わされていて、どのキャラクターに対しても一定の共感を得る事が出来るのには正直驚きましたね。

キャラクターの印象

黒須太一

ザ・変態。
彼は愛すべき変態であり、憎むべき変態であり、悲しき変態であり、笑える変態であり、戦う変態であり、願う変態であり、——つまりは人間である。
彼は求め続け、願い続け、奪い続け・・・そして最後にはそれを祈りに変える。
相手に届いたかどうかを確認する術がないからこそ「祈り」は純粋に「祈り」であり続ける事が出来るのだなあ・・・と思った。相手に届く事を意識し、期待した瞬間に「祈り」は「祈り」ではなくなり、「呪い」や「祝福」になる。
しかし、彼は自分の言葉が届く事を期待もしていなければ、届いた事も確認する術も無い。それでも彼は言葉を紡ぐ。それは空しく虚空に拡散していく。しかしそれでも彼はラジオに向かって語りかける。滅び行く世界に自分の命を刻み込むように。
届かない、届くはずがない。彼はそれを誰よりも良く知っている。だからこそ、彼が最終的に紡ぎ出す言葉は純粋な美しい祈りの結晶となって世界に響き渡る。

宮澄見里

委員長的巨乳眼鏡。
トロ臭い喋り方と高い包容力を持っているようではあるが・・・その包容力の裏に隠されたのは・・・。
個人的には余り好きなタイプではないですが、おっぱいが大きくウエストが引き締まっている感じが実にいい。最初の方ですっかり正体が分かるかと思ったら最後まで引っ張られたという意外な展開におじさんビックリ。

桐原冬子

ツンデレデレデレデレデレデレレレレレレレレ・・・。
個人的にはストライクゾーンど真ん中という感じですな。ラスト近くのエピソードは最高にゾクゾクしましたね。うーん堪んねえ。元々嫉妬深いタイプの女性が好きなんだよね。まあ行き過ぎはイカンけど、そういう所が桐原冬子の魅力だったりするな。
しかし、うーん、やっぱちょい怖い。困ったちゃん1号の名前をあげよう。でも好き。だってエロいんだもん。

山辺美希

最初っから最後まで油断出来ない女だったとだけ言っておこう。
まあなんというか底が見えないキャラクターでしたが、それ故の魅力もてんこもりでしたね。好みのタイプではありませんが、悪くは思えなかったなあ・・・。一度懐に入れてしまうと最高に良い女だと思った。
ちなみに彼女とのHシーンにしかまともな正常位が出て来ないこのゲームってちょっと変だと思った。

佐倉霧

一番脆かったねえ・・・。
個人的には保護欲をそそるタイプですが、実生活でこういう人に近づくと間違いなく逃げられるのが私です。馴れ馴れしいんで。
好きだけど好かれない、ああジレンマ。でも愛奴隷になるのは考えた方がいいと思う。しかも笑顔でそんな事言ったら即孕ませるぞこの処女め。おじさんなら離さないぞー!

支倉曜子

ウチにお嫁に来ませんか!?
俺的に完璧に近い女ですな。最高です。え、マジっすか!? とか聞かれそうですけど。
とにかく何もかも最高水準です。最高水準の○○ー○ーですけど、同じ方向向いている限りは最高じゃないでしょうか。でもちょっとヤバい人なので、困ったちゃん2号の名前をあげよう。
ちなみに彼女とのHシーンで一番興奮したのですが、私の性的嗜好と直接関係があるのかないのかは不明。

他、男二人

おい省略かよ! って突っ込まれそうですが、まあいいやね。
でも桜庭みたいな男には憧れますな。おい、俺の全角アスタリスクを使っても良いぞ? 嘘だけど。

総合

星5つですなあ。
こうして感想を書いたあとでも頭のてっぺんがムズムズして豆の木が生えてジャックが空まで駆け上っていきかねないような感じがする。ムズムズ、ムズムズ。なにかまだ書き足りない感じがするのね。底知れない作品です。見事。
音楽や画面エフェクトという所では以前やったFateの方がずっと上かなと思ったのだけど、それでもそれを補って余りあるストーリーの見事さと描写の見事さが挙げられますね。18禁である事はこの物語にとってプラス要因でありこそすれ、決してマイナスではないなあと思った一品でした。
ちなみに泣いたりはしませんが(ゲームやラノベで泣いた事がありません)、面白かったです。チョイグロなのも好みストライク、それに加えて股間にステキな刺激が入るとなればもう素晴らしいとしか言いようが無いですね。うんうん、良かった。お薦めしてくれた皆さんにありがとーと大きな声で言いたい。
ありがとー!!

・・・ん?

ああ、ベンチで寝てる彼が気になるって?
まあまあ、今ちょうどいい夢見ているみたいだから、もう少し寝かしておいてあげようよ。ずーっと頑張って来たんだから、ご褒美があったっていいと思わない? 起きたら蝉の声も聞こえるから・・・それまでは、ゆっくり寝かせてあげようと思ってね。

ちなみに

プレイ中の奥さん語録。

  1. 「なあ、ひとつ質問なんだけど…どうして今すぐにでも死なないんだ?」って、凄い言葉だね。
  2. 私の場所からだとPCモニターに少女がナニしてるシーンが映って見えるんだけどさ・・・せめて食事中は見えなくしない?
  3. うーん、FateのHシーンの方がエッチぃ感じだったかな。うーん、気持ちの積み重ねの描写がFateの方が多かったせいかも。ロマンチックというか・・・。

1、2はともかく3は意外でしたね。だってFateよりC†Cの方がエロシーン多いから・・・。やっぱり男性と女性じゃやらしく感じるポイントが違うんですね。不思議。

感想リンク

以下の追記は完璧にネタバレなので続きを読むにしておきます。未プレイの人は読まない方が絶対に良いでしょう。

追記

翼無き蜘蛛

ピンクスパイダー 「行きたいなぁ」
ピンクスパイダー 「翼が欲しい…」


捕らえた蝶の 命乞い聞かず
君は空を睨む
「傷つけたのは 憎いからじゃない
僕には羽根が無く あの空が 高すぎたから…」

hide with Spread Beaverの曲、「ピンクスパイダー」の一節です。
この歌は全体的な意味ではC†Cの内容と重なりませんが、この部分については主人公・黒須太一の内面を一部表していると思えます。彼は空に憧れる翼無き蜘蛛に思えます。

それを裏付けるように

某ヒロインは彼にこう言います。

「大半が悪意に満ちた人類だって、あなた一人の命よりはずっと価値があった。わたしにとってさえ、そうです」

人に擬態した蜘蛛、あるいは虫のように某ヒロインからは見えたのでしょう。これは悪意をもって他者を攻撃する人間の方がまだしも人間的であると思えると言う事ではないでしょうか。
彼は虫のように自動的に人を探し、網に絡めとり心を喰らい、そして時にはその全てを奪い尽くしてしまう。そのようにして自らの人間としての姿を保っている。そうしないと人間でいられない。
では何故人間で居続けようとするのか? それは彼に残された20%未満の人間性が、人間を求めてしまうからとも言えるのでしょう。

  • 彼は人になりたい。人になるためには人と触れ合うしかない。
  • 彼は人になるために、人でいたいために人に近づく。しかし結果として人の心を喰らわないと人として生きられない。

これは彼にとってジレンマ以外の何者でもないでしょう。

人で居るために見返りが常に必要な命

そんな彼が友人達との合い言葉のように使っていた、

「友情は見返りを———求めない」

友達から投げかけられるこの言葉は、20%の人間性の部分にとっては奇跡のように心地よい言葉であると同時に、80%非人間の部分にとってはこれ程皮肉に満ちた言葉も無いものだと思います。彼は見返りを・・・友人達の心を貪る事で人の姿をしている訳ですから・・・。
真の意味で、彼らは友人達を大切に思っていません。野垂れ死にしようが、殺されようが、動揺しない彼の姿がそれを物語ってしまいます。しかし、同時に彼は自らもこんな事も口にします。

「見返りを求めない。それだけのことだよ 見返りを求めた瞬間、それは取り引きになると思うんだ」

彼があのまま人として生きるには、常に人の心という見返り(食物)を他者に求める他なかった。その事に気がついていて、そしてそれを深く憎んでいた。
「それだけのこと」=「愛するという事」が彼にとってどれだけ困難な事だったか。人を喰らわずには人として生きられない捕食者が、見返りを求めないこと、それは彼にとって自死にも似た道です。
それでも人として生きる事を願い、同時に誰も傷つけないために彼が最後に選んだ選択は・・・悲しい最適解だったという事でしょう。
絶望的というか、絶望そのものとも言える選択でしょう。それでも人であるために一人で闘い続ける事を選び、命を捨てる事すら犠牲になった人達のために否定し、日々迫り来る狂気の手前で遂に人間性を正常な意味で獲得した彼を一言で形容出来る言葉は——もはやありません。
翼無き蜘蛛は蝶を傷つける事無く、遂に自力で飛び立った。
そしてたった一人、この空が消えてなくなるその日まで、彼は飛び続けたのです。