とらドラ7!

とらドラ!〈7〉 (電撃文庫)

とらドラ!〈7〉 (電撃文庫)

うわっはっは!

辛い時程ブログで笑うのが私!
私生活が火の車であり、結果としてケツの毛まで毟り尽くされるような感じの毎日で人生って甘くねえ! というリアルをイヤって程噛みしめつつ、それから逃避のように読みふけってしまったこのシリーズ・・・ついに7巻です。表紙の大河を見て一言、

GYAOOOOOooooO!? ココでクリスマスなのデスか!?」

若人達の無駄に熱い血潮の滾る真冬のイベント・クリスマスを前にして、物語はさらに加速する! 加速する! 加速する!
室伏が間違って投げちゃったハンマーみたいに最早着地地点不明! いやこの速度、この角度ならばっ! 地球の重力を超えてあの眩き光に満ちた冬の空へと舞い上がり、煌めく星になってしまうのではないか!? いやもうなっちゃってるんじゃねえのか!? 

「ところでアニメ化ですってよ奥様!?」
「フン! どうせワタクシめはアニメは見ませんので関係ありません事よ?」
「……あらあらそんなこと仰ってよろしいのかしら奥様? もし大河の声が釘宮だっただどうするのかしら?」
「クッ……ここで釘宮とはっ、色んな意味で卑劣! ひっれっつっ! 非Let's!」

巻を重ねる毎に作者が歳を取り、それに比例するように意味不明になる私の感想・・・もうなにがなにやら。
もうちょっと日本語っぽい感想は、後日落ち着いたら書くかも知れん!

オッオー!

  1. ヤバイハイテンションのオープニング
  2. ケツに突然ツララを突っ込まれるようにして示唆される燻る火種
  3. しかし、恋慕/努力/勝利を目指して奮闘する竜児
  4. 色んな意味で大どんでん返し

なんとなくここ2〜3話はこんな感じで話が進んでいるような気がします。今回も基本コレですね。
馬鹿臭いムードを漂わせつつも水底ではゆらゆらと蠢く見えない心の流れがあって、あちこちで火花を散らします。その火花の凄さたるや見ているこっちが怖いくらいです。

色んな意味で

もう限界ギリギリです。
前巻で亜美がギリギリだという事が示唆されていましたが、結果として八つ当たり気味にあっちで弾け、こっちで弾け、まるでスマートボールの玉の如くに衝突しまくる亜美と他のキャラクター・・・。しかしそれでも全く亜美というキャラクターが不快に感じないこの話の作りには全く頭が下がります。
そして実乃梨ですが・・・。今回の彼女は『つうこんのいちげき』を喰らって(喰らわして?)しまう事になります。窓を超えて飛び込んだあの一撃がなければ・・・ひょっとしたら物語は別の方向に進んでいったのかもしれません。
さらに大河ですが・・・彼女も遂に人知れず・・・限界を超えてしまいます。

誰も彼もが雁字搦め

あちらを立てればこちらが立たず、こちらを立てればあちらが立たない・・・。
ままならねえ青春にキャラクター達は右往左往、読者の私はみんなの想いが報われるような未来がどこかに無いものかと探してしまったりするのですが、それぞれの胸のうちにあるものを垣間みる度に、

「そんな都合のいい話はどこにもねえ!」

とか思ったりもするのです。
大河、実乃梨、亜美・・・メインと呼べる3人の少女たちが想っているのは全員同じ。たった一人の・・・ちょっとお人好しでちょっと優しくて、ちょっと鈍い高校生なのですから・・・。

SOUGOU

グリル満天星。
アニメとか抜きにしても、今やこの作品以上に青春力を高めているラノベは地球上に存在しないであろう。
確かにメディアミックスを含めた売り上げではハリー・ポッターにちょっとだけ負けるかも知れん! しかし色ツヤ硬さ、持続力・・・とか、なんかそんな感じのよくわからないホルモン臭では完全にこっちの方が上! だと信じて疑わない私であります。
ところで、作中のファミレスのシーンで冷や汗を流したのは私だけでしょうか!? あのなんとも言えない・・・気を使って、くっつけようとする謎の集団心理と、その狭間の駆け引き・・・。
痛い、色々な意味で痛い、胃が痛い・・・。ああいう場の空気を読めずに過ごした私の青春・ドドメ色。

感想リンク

さて

ここまでの状況をちょっとまとめてみよう。

高須竜児

7巻まで来て対に「本音がどこにあるのか一番分からない人」となってしまいました。メインの語り手なのに。
実乃梨に恋する一方で、大河の一番の理解者でもある彼は、一体誰の事を一番大切に想っているのだろうか? 本編内で亜美に揶揄されるように、竜児と大河の関係は実に歪んでいる関係だったりする。

「それでいいの? ねえ、なんでパパ役なんかやってるの? いつからそうなの? はじめからそうだったの?」
「……だから。パパ役なんかやってる覚えはねえっていうんだよ」
「なに言ってんの? 思いっきりやってんじゃん」

端から見ている亜美にはそれがどれだけ少年少女にとって不自然なものだか良くわかるのでしょう。
亜美からすれば竜児が大河を後ろから支え続けているのは揺るがない事実。そしてそのために自分(亜美)が視界に入っていないのも事実。実の親子でもあるまいに大河にかまける竜児は、自分が見つめている相手(実乃梨)にまでは目が行っても、自分を見つめている存在(亜美)には気がつく余裕を全くもっていない。
彼は自分でも気がつかないうちにその優しさで多くの人を傷つけている・・・いや、高校生なんだから仕方ないけどね・・・。
でももし同じような立場にもしなったとして、周りの状況にちゃんと気がつける大人が世界にどれだけいるだろうか? それを考えたら竜児は結構頑張っているとは思う。

逢坂大河

今回ラストのカミングアウトをもって、大河が誰を「一番」に想っているのかがはっきりしました。
心の拠り所、帰る場所、自分の理解者、欲しいものをくれる人・・・それらは全て竜児という少年に集中しています。

こんなふうに背を抱いてくれる腕が、今までにあっただろうか?
信じて預けたこの心を裏切らない腕が、他にあるだろうか?
ない、ない、ないないない。他にはない。どこにもない。ここにしかない。

しかし状況が動くにつれて、彼女にとっての楽園は失われようとしています。それも自分の手助けによって勢いをつけて。
大河はこれからどうするのでしょう? 竜児を取り返しに行くのでしょうか? しかし最早事態は彼女一人が思い切ればいいという状況ではなくなってしまいました。

櫛枝実乃梨

誰かが幸せになれば、誰かが不幸せになる。
無頓着を装った気配りの人であり、そんなことに気がついている実乃梨は、まるでハートのAを引いてしまうのを恐れるように手探りをしながらカードを引く。でも相手からは「ほら、これがAだよ」とカードが突き出されます。
でも実乃梨にはそのカードを指しだしている相手が悲しんでいる顔が見えてしまう。昔は見えなかったかも知れない。でも今は見えるようになってしまった。
幽霊やUFOが見えるようになってしまった。カードの中にハートのAがある事に気がついてしまった。
きっと実乃梨はこう想っているに違いありません。「ハートのAが欲しいだなんて気がつかなければよかった」「恋なんてしなければよかった」「竜児のことが好きだなんて気がつかなければよかった」と。
勇敢なようでいて臆病、優しさ故の残酷さ・・・彼女の天秤はいつも揺れ動いています。

「だめなのやめて、それはやめて!」

本編で一瞬だけ感情を爆発させた実乃梨の本音は一体どこにあったのでしょう。
恐らくは・・・大河の気持にも、竜児の気持にも、あるいは亜美の気持にも気づいている実乃梨は、何も出来ない、何もしてやれない自分が美味しい所を持っていってしまう事が許せなかったに違いありません。
もし亜美の例え話が的を射ているとしたら、実乃梨は余計に自分が得をする事が許せないでしょう。大河の父の事で誰よりも怒りと悲しみを感じていたのも、実乃梨だったのですから・・・。

川嶋亜美

今回一番可哀想だった人と言って良いのではないでしょうか。
クリスマスパーティーの準備で奔走し、竜児をつつき、大河をつつき、実乃梨をつつき・・・頑張る割にはちっとも報われない美少女です。せっかく竜児のために用意した(と思われる)サプライズも、竜児と仲良くなろうと頑張った準備も、何一つ報われないままクリスマスの夜は更けて行きます。

「だから忠告したのに——ああ、もういいわ。あんたにはなに言っても無駄。あたしの言うことなんか、聞いちゃいないんだ。……どいつも、こいつも……もう、いい」

彼女は竜児を見限ったのでしょうか? それは現時点でははっきりと分かりません。
彼女は娘もちの父親(バツイチ)に懸想する大人の女性のやり切れなさに似たものをその一身に背負っています。もし彼女が何か大きな行動を起こすとしたら、次の8巻でしょう。ここまで虚仮にされてキレないなら、恋する女じゃない・・・と言ってしまおう。
それから私の想像ですが、亜美の言う「どいつも、こいつも」の中に自分自身が入っているであろう事は想像に難くありません。