化物語

化物語(上) (講談社BOX)

化物語(上) (講談社BOX)

化物語(下) (講談社BOX)

化物語(下) (講談社BOX)

いやあ

面白かった。
西尾維新独特の軽妙な言葉遊びが全編に散りばめられていて、結構な文章量の割にはあっという間に読み終わってしまったという感じ。
ただ、笑える会話が大量に散りばめられている関係で、特に考えさせられるとかそういった事は特に無い一冊かな(少なくとも「きみとぼくの壊れた世界 (講談社ノベルス)」なんかと比較すると)。

この本は

エンターテイメントに特化した本のような気がするな(西尾維新はいつだってエンタメ作家かも知れないけど)。西尾維新独特の語り口のファンであればそれだけで間違いなく買いじゃないか。
タイトルに「化物」と入っているけど、どちらかというと現代まで変わらず生き残る妖怪物という感じ。
しかも妖怪達との争いというよりは、それらとうまくやっていく(あるいはうまくやり過ごす)物語だと思う。この物語の妖怪達は基本的に人の心から現れるのだけれど、それと対峙して(退治して)、登場人物達は元の日常に戻っていく・・・という基本構成。
妖怪を見つめることで自分の過去や現在を見直し、立ち直っていくという・・・あ、結構考えさせられるところもあるのか?いや、きっとそんなこと考えずに素直に楽しむのがこの本との正しい向き合い方だと思う。

ところで

微妙に、なんとなく、京極夏彦作品のアレを思い出さなくもないけど、まあ影響を受けるというのはどこでも良くある話だし、「ああ、あの話を西尾風に脳内変換するとこんな感じの作品になるのか〜。面白いじゃない?」といった感じなので全然OKではないかと思います。
一冊あたりの価格が高いことを除けは不満らしい不満はないですねえ(いや、結構大きな問題か?)。

あと

あるといえばあるのが、書店のどのエリアで売っているのか分かりにくいってことでしょうか?
ラノベと並んで置いてあることはあまり無いみたいだし・・・この本ってどういうカテゴリ?ハードカバーの本って感じでもないし(あ、amazonのリンクにはソフトカバーって書いてある!)、書店でも悩んでいるような気がする。

キャラクターは

主人公の阿良々木暦はとある理由からいわゆる「怪異」に惹かれやすい性質なのですが、実は性質というよりは性格、でしょうね。困っている人を見たら自分を差し置いてでも助けずにはおけないというある意味一番あんたが困ってないか?という性格のようです。
そうはいっても単純な人間ではなく、「いい人」に収まらない魅力もあります(幼女にプロレス技→失神みたいな)。「化物語」は短編連作といった形式をとっているのですが、それは主人公が遭遇した怪異の数そのままです。一編につき一怪異。わかり易いですね。

その他の登場人物

ですが、戦場ヶ原ひたぎを始め、一癖も二癖もある強烈な個性を持ったキャラクターばかりですが、それが本書の魅力でもありますね。
ちなみに主人公を除いて基本的に全員がボケキャラ(なかにはエロボケキャラもいますが)。よって主人公は必然的にツッコミになります。強力なボケに対する主人公の細かくてマニアックで苛烈な突っ込みは本書の大きな魅力の一つでしょう。

また

主要キャラの一人である戦場ヶ原ひたぎは、ライトノベル界に「萌え」に取って代わる新たなジャンル「蕩れ」の恐らく始めての提唱者でもあります。この事実をもってこの本はライトノベルの歴史に永遠に名を残すかも・・・知れない。もちろん戦場ヶ原ひたぎ本人も猛烈な「蕩れ」キャラで、いろいろと堪らない所があります。
戦場ヶ原ひたぎを既にあるジャンルで表現するなら「ツンデレ」と呼ばれるのでしょうけれども、ただのツンデレと言い切れない所が面白い。もちろん基本はツンデレなんでしょうけど、そこから逸脱したキャラクターの魅力を表現できるところが、西尾維新って感じなのかな。
他のキャラクターだって一言では言えない程魅力があります。八九寺とか、羽川とか、神原とか、千石とか、忍野メメとか、ああ楽しい。

イラストも

本書のイメージにはばっちり合っていると思います。西尾ファンならずともラノベ読みなら買って損する内容ではないと思いますね。うん、これぞまさしく青春エンタ!と言い切って良い内容だと思いますよ。値段高いけど。
正直、読めるものなら続編を希望したいところだけど・・・これはこれでキレイにまとまっちゃってるから、良いのかな。でもたった2冊でこの魅力あふれる作品とサヨナラするのは正直寂しい・・・。これで終わったらもったいないなーとか思ってしまう。忍とか、千石とか、妹コンビとか、まだまだ掘り下げられそうなキャラクターもいる事だしね。最初星4つだったけど5つに変更!文句無しに面白い!
こんな作品を生み出し続けてくれるなら、いつまでもついて行きますぜ西尾先生!とか思わせる一冊でした。

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