ある日、爆弾がおちてきて
ある日、爆弾がおちてきて (電撃文庫) | |
古橋 秀之 メディアワークス 2005-10 売り上げランキング : 12182 おすすめ平均 かなりの良作 独り善がりな短編集 時間をテーマにした短編集 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
一言で言うと、良く出来ている短編ですね。
イラストもイメージを損なわず補強するようなでしゃばり過ぎないテイストが秀逸。ものすごく面白いという訳では無いけれど、読んで損をしたとかは絶対思わない類の本ではないでしょうか。
短編連作の形式をとっていて、テーマとして全ての作品の根っこにあるのは色々なパターンの「時間」です(これは作者もあとがきで述べています)。もう完全にアイデアの勝利!といった感じですね。
イラストはいわゆるラノベですが、誰が読んでも楽しめるライトSFのような内容になっています。最近流行のラノベに飽きつつあるのであれば、ちょっと刊行してから時間が経っていますが読んでみたらいかがでしょう。星新一を思い出す人もいるかもしれません。
個人的には作者のいうテーマ「時間」以外に「恋」という「隠れテーマ」もあるように思います。実はそれの見せ付け方が実にうまい。この隠れテーマのせいで純粋SFとかより遥かに多くの人にとっつきやすい仕上がりになっています。
では、各短編を簡単に紹介。
「ある日、爆弾がおちてきて」
表題作。昔好きだった女の子に似ている姿をした爆弾が突然現れる話。簡単に言えば恋する爆弾。切ない。
「おおきくなあれ」
くしゃみをする度に年齢退行を起こす風邪が流行るお話。付き合っている彼女がこんな病気にかかったらえーと、どうしましょうか。ビデオに撮る(極悪)? オチが秀逸。実際にこんな病気あったら楽しいのに。え、不謹慎?
「トトガミじゃ」
図書館に棲みついている「らしい」なぞの神様と図書委員の少年少女の不思議な交わりを描いた作品。ですが主役は多分別の人という。いいなあトトガミ様。ほんわかとする話ですね。
「恋する死者の夜」
恋と、終わりのない失望の話。あんまり書くとすぐネタバレになりそうな話。愛するって事は難しい。
「出席番号0番」
個人的に一番のヒット。面白い。いつもクラスの誰かに成り代わって現れるという「出席番号0番」の生徒と、主人公の少年の交流のお話。毎日クラスの生徒の誰かに憑依するように現れて、しかもそれが当たり前になっている不思議な学校。この発想良く考え付いたなあ。
「3時間目のまどか」
ガラス窓に映る少女の話。そしてガラス窓に映っている以外に存在しない少女の話。あんまり書きすぎると魅力を損ないそうなのであまり書けない・・・。しかし比較的アイデア自体は似た話がありそうですね。でもやっぱり良い話。
「むかし、爆弾が落ちてきて」
一巡して最後も爆弾の話。時間を操る爆弾のせいで世界から孤立して、一人殆ど停止した時の中に囚われてしまった少女と、それを見つめるしかない人々の物語。ラストは・・・読む人によって印象が変わるでしょうね。とりあえず当たり障りの無い事を言っておくと、若者の好奇心に勝るエネルギーは無いって事でしょうか。
この本は、ライトノベルを読んだことの無い人にも安心してオススメできる一冊です。多分普通の書店ではそろそろ扱わなくなってきているでしょうから、それこそAmazonとかで購入されると良いと思います。
イラストが恥ずかしくていやぁん、買えない〜!とか思っているご年配の方々もこれを機会にある種の羞恥プレイに目覚めるか、あるいは今こそ泥沼のようなネットショッピングの道へなだれ込みませんか!?それは以下のようなプロセスで簡単に実現できます!
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- 待ってくれ美代子、これはただの偶然なんだよ!大体こんなページを作った奴が悪いんだよ!
・・・いえ、冗談なので気にしないでください。
(追記)古橋秀之って「サムライ・レンズマン (徳間デュアル文庫)」書いた人だったのか! 知らなかった! 買おう買おうと思っていたけど金が無くて立ち読みで読破(最低)した挙句、買いそびれたサムライ・レンズマン。そっかー。なるほどねー。買わんでスマンカッタ。