終わりのクロニクル

終わりのクロニクル1〈上〉 電撃文庫 AHEADシリーズ
終わりのクロニクル1〈上〉   電撃文庫 AHEADシリーズ川上 稔

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おすすめ平均 star
star真剣にラノベを読みたい人にはお勧めです
star読みにくい
starとりあえず・・・

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終わりのクロニクル〈7〉―AHEADシリーズ (電撃文庫)
終わりのクロニクル〈7〉―AHEADシリーズ (電撃文庫)川上 稔

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おすすめ平均 star
star要注意
star決戦、決戦、大決戦! そして大団円!!
star終わるなッ!!

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えーと?

よくも悪くも購入するのに熟考を要する本では無いだろうか?
既に完結済みとはいえ、最終巻のオニの様な分厚さは普通のラノベ読者の腰を引かせる事となる驚愕の1000ページ超え。
アホか。
初めて書店で見かけたときは内容とかもうなんかすっとんで「日本の製本技術も進歩したもんだなあ」と変な感動を覚えたものだ。全巻揃えるとあなたの書棚の一角を完全に席巻するする事となり、作者の川上稔は一体何を考えているんだろうなどと首をひねってみたくもなる、そんなシリーズが「終わりのクロニクル」だ。

この文章は

あまりの分量に購入を躊躇している、そんなあなたの判断材料となるべく書いているつもりである。Wikipedia辺りを覗いてみるのも良いのだけど、読んでいない人にとっては重大なネタバレの嵐なのでWikipediaは危険。私はちょっと泣いた口なので、皆さんWikipedia注意。
なぜか主立った舞台が東京・多摩地区で、一巻のオープニングは私の地元でもある立川駅前からスタートする。作品中にはその他にも昭和記念公園やら、現在オタクの巣窟となりつつある立川第一デパートの名前なども出て来て、現地を知っている人間からすればにやりとしてしまう。
ストーリー的には説明し始めるといつ終わるか分からないので割愛。独創的な設定も数多く、完全に織り込まれたクモの巣のような話なので、敢えて避ける。とにかくもの凄い。ある種偏執狂的。方向性は違う物の、「円環少女」などの異様なまでの細かい設定に方向性は違うが近い物がある。
ただし円環少女に比べて遥かに読みやすいのは、そうした設定/構想の説明が基本的に登場人物の会話によって行われるためだと思われる。口語調で平易な言葉を使って説明されるため、分かりやすい。またそれ以上に、重要な世界設定が一文で説明出来てしまうというのも大きい。以下本文から引用。

・惑星は南を下とする。
・文字は力の表現である。

この宣言がされる場合、コップに「毒」と書いて水を入れればそれは「毒」になり、「スゴい」と書き足せば水は「毒」から「スゴい毒」へとパワーアップする。そして問答無用で南が重力の働く方向になり、物は南に向かって落下する事になる。
こうした物理法則すら支配する「概念」と呼ばれる物が世界の根本原理として存在する世界を舞台として、終わりのクロニクルは展開する。
それと、これについても特筆すべき事だと思うが、川上稔の恐ろしさは「一巻を書き始める段階で最終巻を書き終えるまでの完全なプロットがすでに完成していて、そして恐らく最初の構想から殆ど脱線していないだろう」ところに尽きる。とんでもない伏線の張り方が山のように出て来る様はまさに圧巻の一言だ。
そうした世界でこの「年代記」は進んで行く。物語の主人公である佐山・御言(特徴的な名前の表記だ)はこの世界において「全竜交渉」という概念の奪い合いを行った戦争「概念戦争」の戦後処理交渉に身を投じて行く事になる。
ストーリーについては上記の通り説明する気が失せる程ナニなので、代表的な登場人物について言及することで間接的にこの本を紹介する事にしようと思う。

佐山・御言(さやま みこと)

主役なのでしょっちゅう出て来る。ムカつくがしかし、こいつが最前線に出て来ている限りは登場人物にも読者にも「なんとかなる!」と思わせてしまう不思議な魅力がある。当然見せ場も多い。ただし筋金入りの変態でねじくれ曲がった根性をしているため、この佐山・御言を気に入れるかどうかでこの本を読破できるかどうかが決まると言っても過言ではない。
また、その変態的なエネルギーの殆どを同僚(?)の新庄に対して発揮するため、変態とはいえ基本的に新庄以外の人物は変態的な被害は受けない。矍鑠たる変態、堂々たる変態の代表格である。男はこうありたい(普通通報されます)。

新庄・運/新庄・切(しんじょう さだめ/しんじょう せつ)

佐山・御言のセクハラ被害に遭うある意味とても読者を楽しませてくれるキャラクター(たち)。しなやかな肢体を惜しげも無く晒して一巻の表紙を飾っているのは彼女らである。色々な運命に翻弄されつつも佐山・御言をよくサポートし、変態的な行為に対してよくツッこみ、最終的にはきっちりその毒牙にかかる所まで読者の期待を裏切らない見事なヒロイン。ライトノベル界広しともいえど、(以下ネタバレ反転)作中であらゆる場所の処女を同意の上で奪われるヒロインは絶後ではないか?飛び抜けている。もちろん性的な意味で(もの凄くヤな飛び抜け方だよな)。

出雲・覚(いずも かく)

生徒会長だが普通の生徒会長ではなくストロング馬鹿。しかし意外と大人の男としての魅力を持っており、侮れないどころか現実に存在したら真っ先にモテない男の潜在的な敵になりそうなタイプ。絶対モテると思う。実際、作中でも風見・千鳥といういい女を彼女にしている。貴様! 変な所にリアリティを出すな!

風見・千里(かざみ ちどり)

上記の出雲・覚の彼女でもあり生徒会会計。出雲・覚の世話女房的なポジションを持ちつつも大事な所ではきっちり出雲・覚に「頼る勇気」をもった良い女。畜生!良い女だなこのやろう!
実は狭山と新庄が表の主役なら彼女が裏の主役と言って良いと思う。色々な葛藤を身に纏いながら「全竜交渉」を邁進する姿は正しく戦いの女神。すばらしい。

飛場・竜司(ひば りゅうじ)

のぞきや痴漢行為などをツレの美影さんに繰り返しつつも嫌われず、どちらかと言えば激しく愛されている変態的少年。美影さん早く逃げてー!シリアスになる事がそもそも少なく、意外と強いがどちらかと言えばヤムチャ的な扱いを受ける事も多い。しかし憎めないタイプか。いいなあ美影さんに愛されてて、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう・・・!!

美影(みかげ)

上記の飛場・竜司に騙されてその魅惑的な肉体を弄ばれている(ウソ)美女。訳あって微妙にトロ臭いのだがそれがまた魅力だ。彼女自身には大きな秘密があり、それは飛場・竜司にも大きく関わってくる。本編への影響も大きい。良い体してるぞこ、こ、このやろう、こんなイケナイおっぱいを持ちやがって、この、この、こうしてくれる・・・!(落ち着け俺)

ヒオ・サンダーソン(ひお さんだーそん)

総天然ロリボディを持つ少女である。しかも発言した場合普通の事を話している筈なのに、重要な「名詞」「代名詞」などを省略する事によってなぜか「エロい事」を話しているような誤解をさせるのが得意な少女でもある。とくにダン・川原に「ものすごくエロい」事をされた様に話すのが得意。事実は違ったりするので要注意だ。だからまだ我々にもモノにするチャンスはあるぞ!(ない)

ダン・原川(だん かわはら)

主役級メンバーの中である意味唯一の常識人ではなかろうか?少なくとも変態ではないが、相方のヒオ・Tに流されてきっと作中では変態として認識されているに違いない。ざまあみろ!

基本的にココまでて主役級は紹介し終えてしまった。「終わりのクロニクル」は彼らの成長物語である。
それから、一人だけ主役級でもなく、物凄くどうでもいいのだが作品に華を添える存在を追加で紹介しておこうと思う。

大城・一夫(おおしろ かずお)

役職は部長でしばしは「大城全部長」と評されるが、最悪の老人かつ地上の恥部と評される老人。決して死なない。以下に「大城全部長」について最も端的に表現したと思われる所を抜粋。

「世界の全恥部を納める全部長が滅びたぞー!!」

それでも死なない卑猥で下品で困った老人の頂点に君臨する存在だ。

とにかくとんでもない話

一言で言えばこんな感じだろうか。適当に登場人物を説明しているだけでもう十分疲れた。
きっとこの作品を読み始める前ならその分厚さに怯むと思うが読み始めてしまえばあっという間だ。気がついたら「進撃せよ!」とかいっている作品。
読み終わってみると「いやあ良くこの文字数で収めたなあ」などと完全に頭のネジが緩んだ感想を持ってしまったりする作品でもあります。とりあえず気になっているなら一巻(出来れば上下で)買ってみると良いんじゃないかな。読了はイバラの道だけど・・・オススメです。
あ、最終巻は仰向けに寝ながらだと読めないよ。うつ伏せでも微妙。マジで。

追記

冷静になって考えてみると、「遅筆だから・・・ははは」みたいな言い訳をしまくっていつまでたっても完結させられない田中某とか、100巻で結局終わらずぐだぐだと独り言同人ノベル書いている温帯作家(サラリーマンなら両方もうクビですよクビ)とかが跳梁跋扈しているラノベ界において、この分量のテキストできっちりと完結させる作品を書く、これは画期的なことじゃなかろうか?
だれか川上稔を表彰とかするといいと思うよ。

さらに追記

主役級ということで登場人物紹介を行ったけども、実際にはこの数倍に及ぶ重要なキャラクターが登場し、活躍シーンだけでみると、上記の主役級よりも遥かに多い者も存在する(ヒオやダンは登場が遅いため、登場シーンが必然的に少なくなるため)。「在るべき婦人」と呼ばれるSfや、魔女ブレンヒルト(とセットの黒猫が可愛い)、自動人形の八号・・・ロボっぽいものから妖怪っぽいもの、ハゲキャラとかまで含めてオニのようにキャラが登場して、かつ彼らも一人一人が非常に魅力的なので、ぜひこの作品に一度目を通されることを重ねてオススメするものである。
ただ、やっぱりもの凄い量なので、時間がある時にでも・・・。学生さんなら長期休みとかに挑戦するといいんじゃないかな。