狼と香辛料〈3〉

狼と香辛料〈3〉 (電撃文庫)
狼と香辛料〈3〉 (電撃文庫)支倉 凍砂

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3巻はホロとロレンスの繋がりが試される様な出来事が起こる話です。ロレンスにとっては一難去ってまた一難といった感じでしょうか。本編の紹介がてら、ちょっと気になっている所を書いてみます。先に言っておきます。星5つの作品ですね。おすすめです。

狼と香辛料の面白さの秘密について

なんでなんだかなーとか思っていた訳です。このシリーズの面白さは一体なんなのかと。1巻の感想の時にも書きましたけど、色々な側面を持っているとは思いますが、今回は二人の人間関係にフォーカスをあてて感想を書いてみます。

ラノベにはまともな大人の恋愛が無い

ライトノベルは若年層をターゲットにしているため、恋愛に関しても比較的幼いやり取りが中心です。ツンデレとかその最たるものだと思います。恋愛に対して経験値の少ない少女じゃなければ、ある意味ツンデレなんて成立しない訳ですから。大人になればなるほど、経験を積めば積む程ツンデレのような「分かりやすさ」というのは消えていき「いかに優位に恋愛を進めるか」という所が中心になるからです。
で、ライトノベルのメインの読者層は、未成年の恋について扱ったものは沢山読んでいるんですけど、大人の軽妙洒脱な色恋の駆け引きを中心にした作品に出会う事が少ないのではないかと思うのです。だからそうした部分を扱っている作品が新鮮なのでは無いかと考えました。
ライトノベルの世界はこう言ってはなんですが、童貞と処女の登場人物達のたまり場みたいな様相を呈しています。正直「もうお前らいい加減ファッ×しちまえよ!」と、思った事が何度あるでしょうか(汚れた大人だな)。
その逆に作品中でナニする事があったとしても、まともな恋愛の結果そういう風になるというより、止むに止まれず煽られてとか(ナニする事にナニする以上の意味がある)、鬱系で無理矢理だとか、政略結婚的にアレだとか、何かの儀式の結果だとかそんなのばっかりだったりします。

ラノベ恋愛模様の分類(ちょっと適当)

(以下山のように多数)

(他にもあるかも?)

(多分まだまだあるけど略)

狼と香辛料」の特殊性

実はマトリクス表を作った方が分かりやすいんでしょうけど「狼と香辛料」が結構特殊な位置にいる事が分かると思います。自前で適当に作った表なので全く説得力に欠けますが、ライトノベルの世界には正直、「少年(童貞)少女(処女)の肉体的接触を伴わないプラトニックな恋愛」かそこからの発展系、または「何かの理由付きか強姦など含む無理矢理系」などが中心で、大人同士でお互いの立場をわきまえた恋愛を扱った作品というのが実は殆ど無い事に気がつきます。この辺りがキレイに欠落した状態になっています。ここにメインをおいて書かれている作品がいかに少ないかも多分ある程度お分かり頂けるのではないかと思います。
もちろん例外的な作品はありますが、この「狼と香辛料」がその数少ない例外のうちの一つだという事は間違いないと思います。少なくとも作中のホロはロレンスとの「恋愛とも仲間とも言えない微妙な距離感」を楽しんでいるような所があります。もちろんいつもって訳ではありませんが、それでもホロとロレンスの間にある繋がりや恋愛(未満?)のようなやり取りは「大人」の恋愛だって事です。これは間違いないと思います。

こうした分野に偏るのは、まあライトノベルなのでこういう感じになるのは仕方のない事なのでしょうけど、「狼と香辛料」が今まで無かった部分をキレイに扱っているのが分かります。どう考えてもホロとロレンスは処女と童貞の恋ではないでしょうから(残念ですけど)。
これ、「狼と香辛料」の面白さの秘密じゃないかって思っているんですけど、いかがでしょうか?