ブラックランド・ファンタジア

ブラックランド・ファンタジア (集英社スーパーダッシュ文庫)
ブラックランド・ファンタジア (集英社スーパーダッシュ文庫)定金 伸治

集英社 2004-06
売り上げランキング : 263050

おすすめ平均 star
starチェスバトルモノ、と言っていいのかな。

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

完全なる作家買いの一冊、大当たり。ネムかわいいよネム。でも私はロリコンじゃあないと思う・・・最近自信がなくなってきたけど・・・。

ストーリー

19世紀の英国、「賭けチェス」を戦う事の為だけに貴族に拾われ、育てられた元捨て子の少年・スィン。その少年があるとき自分の父親の存在を知り、家を訪れる。そこには椅子に縛り付けられた人形のような少女・ネムがいた。彼は彼女を引き取り、そしてまた賭けチェスの世界に身を投じて行くのだが、同席したネムがある時チェスに口を出す。そこで彼女が「非常に特殊な才能」の持ち主であると言う事実が露になる。それが奇妙な事件をスィンの周りに起こし始めるのだが、という話。

チェスなんて駒の動きくらいしか知らんけど

楽しい。これは楽しかった。発刊時期が2004/6/30となっているから発売されてからもう2年以上経ってしまっているんですが、続編とか作るつもりはないのかなー? 猛烈に面白かったんですけど。定金伸治の表現や文体が自分に合っているのかも知れないけど、いずれのキャラクターも生き生きとしている様で、読んでいて物語の中のイメージがもの凄く良く頭の中に浮かんだ。

多分ミステリ

まあスィンの周りで起る奇妙な事件とその犯人については途中から大体犯人が分かってしまったのだけど、それでも面白かった。物語として面白いのでミステリがどうとかは正直どうでも良かった。人形以上/人間未満のような少女と、それを優しく抱え上げて一緒に過ごす優しい少年、彼の努力、少女の才能、彼らの周りの人々、チェスでの死力を尽くした戦い(のように十分見えるそれっぽい描写)と、紡がれる言葉、人の善意と悪意と乱れた時代、色々な要素が合わさって面白い物語を作り出しています。

好きですねえ

星4つは間違いない。4.5位。もう少しで5つでいい。正直5つあげたいけどミステリ的には不十分な感じなので減点した。まあこれは仕方が無いとも思える。それでもこの文字の分量で4つという事は、もう少しページ数を挙げて、人物や彼らの普段の生活やらを丁寧に書く余裕をあげれば間違いなく星5つに届いたのではあるまいか?
星樹氏のイラストも良い。独特なタッチですが、口絵の各キャラクターの特徴を良く捉えたカラーと、本文内の挿絵のタイミングの良いシーンの切り取り方も非常に評価したい。登場人物達の雰囲気と動きを感じる良い挿絵だと思います。

余談

確かに「ユーフォリ・テクニカ」を生み出せた作家だなあという感じがとてもしましたね。「ユーフォリ〜」が面白いと思った人でこの本を読んでいない人はこの本も読まないと多分損。この本を読んで作者が色々予想もつかないテーマを毎回ひねり出して、読者を楽しませようという努力というか発想を「ユーフォリ〜」に至る今まで、忘れていないのだなあと思いました。
ところで、この「ブラックランド・ファンタジア」の続編書かない? 書いて! お願い! この人通常の6倍位(赤い彗星の倍)のスピードで働いて、沢山本を書いて欲しいです! 編集者! 作者にマグネット・コーティングを!