ナルキッソス

〔MF文庫J〕ナルキッソス (MF文庫 J か 5-1)
〔MF文庫J〕ナルキッソス (MF文庫 J か 5-1)ごとP/黒井みめい

メディアファクトリー 2008-07-23
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ストーリー

自動車の免許証を取った翌日、僕・阿東優は病院に入院した。そして、病院から完全に離れることが出来なくなった。
しばらくの間病院と家を行き来する生活を繰り返した後、僕は病院の7階に移されることになった。この病院の7階は・・・片道切符の電車と同じ。7階で死ぬか、あるいは退院して家で死ぬか。・・・そこに生きるという選択肢は存在しない。そういう者達が集められる場所だった。
自分の命の終わりを呆然と見ていた優の前に、一人の少女が現れる。彼女の名前は佐倉瀬津美。彼女も優と同じ病院7階の住人だった・・・。
彼女は優に幾つかの言葉を伝える。それは7階に連れてこられた者に口伝で伝えられた言葉。

『三回目に仮退院させてくれたら覚悟しろ。四回目はまずない。もう家には帰れない』
『もしも逃げたい時には、A駅ではなくB駅に行くこと』
『何も食べるな。それが一番の近道。家族にとっても一番負担が小さくて済む』

そんな少しも救いのない言葉だった。
そしてそれを告げた瀬津美に仮退院が再びやってきていた。それは新たな死の宣告に等しかった・・・。
しかしある日、優は一つの鍵を手に入れた。一台の車の鍵。何かが変わるかも知れない鍵・・・それを手に、優は声をかける。

「それじゃあ……いっしょに行くか?」

死が約束されてしまった若者二人による一つの逃避行と、その結末を描いたシリアスな作品です・・・が?

これは

小説としての体をなしてないという印象が先に来ますね。
元々はゲームだった様ですが、それをそのままコピペで小説にしたんじゃないかという感じの無理があっちこっちに見受けられます。特に間の取り方が小説としては最悪という感じで、テンポがもの凄く悪いです。
ゲームだったら絵とか音楽があるので間が持つのでしょうが、小説だと何か早送りの作品をずーっと読ませられている感じで非常に居心地が悪かったですね。

さらに

「〜た」で終わる文章がメチャ多いです。ページの殆どを埋め尽くしていると言っても過言ではありません。
次いで多いのが体言止めの文章で・・・これにも辟易としましたねぇ・・・(体言止めには注意!)。
特に「銀のクーペ」があっちこっちに連発して登場するのはどうかと思いました・・・かなり酷い事を言ってしまいますが、本当に洒落にならないくらい体言止めと「銀のクーペ」が多くてですね・・・マジで金取るのこの本!? とかちょっと思いました。だってですね・・・。

慣れないクラッチに、ガツガツとつんのめりながらも走る銀のクーペ。

暮れ始めた空の下、再び走り始めた銀のクーペ。

再び走り出した銀のクーペ。

そんなことを思いながらも、知らない道を真っ直ぐに進み続ける銀のクーペ。

そんな蒼い空を、メタリックの車体に映して走る銀のクーペ。

冬の澄んだ青空を、ボンネットに映して走る銀のクーペ。

冬の澄んだ空の下、日差しを跳ねて進む銀のクーペ。

再び走り出した銀のクーペ。

尚も高速を走り続ける銀のクーペ。

再び動き出した銀のクーペ。

マフラーが少し割れて、うるさくなった銀のクーペ。

こんな感じなんですよ!?
・・・・・これね、ほとんど同じ文章があったりしますけど、本文内で重複しているんであって、私が重複させたんじゃないんですよ。
ちなみに「銀のクーペ」が「赤いロードスター」に変わったりする場面もありますけど、だからなんだってんだって感じですね。当たり前ですけど。

総合

星1つ。
これは小説未満ですね。ですので内容とかに特に触れるつもりがないままこの感想を締めくくります。
ゲームで読んだ場合には違和感が無かった文章なのかも知れませんけどねえ・・・。画面やBGMや立ち絵の変わりを全て文章でやらなければならない小説という媒体ではこの文章は読むに耐えかねます。
正直きちんとゼロからリライトする位の気合いは見せて欲しかったですね。まあゲームをプレイ済みの人がだったら意外とすんなり読めるのかも知れませんね。分かりませんけど。そういう人以外には間違ってもおすすめしません。
内容の方は「半分の月がのぼる空」をかなり虚無的にした感じと言えばなんとなく分かってもらえるんじゃないかと思います。でも主人公はひょっとしたら銀のクーペです。あ〜、ゲシュタルト崩壊してきた・・・。

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