特異領域の特異点 真理へと迫る七秒間

特異領域の特異点―真理へ迫る七秒間 (電撃文庫)

特異領域の特異点―真理へ迫る七秒間 (電撃文庫)

ストーリー

その日、地球上から一瞬にして50億の人間が失われた。
何が起きたのかを理解したものはごく僅かしか存在しなかった。そしてその日を境に世界の常識は悉く覆された。その日この地上に実現されたのは「特異領域理論」によって展開された「連続した特異領域(ドメイン)」が全ての物理方式を過去のものとしたからだった。
ドメインは確かに存在するが、一切のエネルギーを持たず、質量がなく、大きさを持たない。「特異領域」はあらゆる計測器で捉えることが出来ないまさに特異点であったが、人間の脳そのものがその特異点に対して一種の受信機のような働きをするため、機械的な補助を受ければ「特異領域」を自在に操ることが可能になったのだった。
特異領域外の物理法則に一切支配されない「特異領域」は、ありとあらゆる奇跡を可能にした。地上からモノの過不足から発生していた争いを過去のものとし、世界秩序は特異領域理論完成前と全く違う姿となった、そんな世界。それでもやはり新しい物語は紡がれる。
今や一つの巨大な大学となった旧日本列島に一人の学生がいた。自称天才で確かに天才肌だが、教授を殴って無期限停学中の若者・一ノ瀬賢悟は、特異領域について独自の視点で学び続ける若者だ。そのはた迷惑な性質から理解者は少なかったが、僅かながらも親しい友人(神崎清十郎西条彩世)を得て嬉々として学問を進めていた。
そんな彼らの所に一つの情報が飛び込んでくることになる。世界を変えた5人の科学者のうちの一人・天川理璃からの暗号化された放送が届いたのだ。そこには特定の人間にしか伝わらない方法で「SOS 硫黄島 天川理璃」のメッセージが隠されていた・・・。
オリジナリティ溢れる世界観を築き上げ、その中でさらに世界の謎に迫ろうとする若者達の情熱と苦闘と戦いを描いた意欲的なSF作品です。

面白い・・・?

というにはちょっとユニークすぎるかも知れません。
一通り読み終えてみればこの物語の根幹となっている「特異領域」がなぜ特異領域たりえるのかという疑問になんとなく理解の光が当たることになるのですが、そこに至るまでは「特異領域」はそれ以外に表現のしようのない「特異点の集合体」として存在するため、読者の理解を超えた設定であるためです。
何が起きてもおかしくない科学というのは最早説明不足の魔法以外の何物でもないので、それをとりあえず受け入れて読み進められるかどうかというのが最初の山かも知れません。もちろん「特異領域」は科学の体裁を整えているので論理的な説明が作中でされることになります(マテリアルロウやマテリアルという特殊な存在についての説明もあります)。
しかしそれを「納得できるかどうか」というのは読者次第ですので、結局の所「この作品を楽しめるかどうか」は作者が繰り出す文章を引き金にして読者がどれだけ脳みそに想像力の火花を飛ばせるかどうか、でしょうか。
まあSF好き人間の視点から捉えれば「それこそがSFの楽しさでしょ?」ということにりますし、「読者の脳みそに火花をどれだけ飛ばせるかがSF作家に求められる資質でしょ?」となるんですが、まあライトノベルとしては珍しいのは間違いありません。

それはそれとして

ライトノベルしている部分も確かに多数あります。というかライトノベル以外の何物でもないと思われる描写も実に多いです。
気がついたら撃ち合い殺し合いのような血生臭い争いに巻き込まれていたり、怪しげとしか言いようのない宗教団体に囲まれて斬り合いをしていたりして、先の展開が読めないという意味ではもう他の追随を許さない感じです。それらと平行して主人公が結婚を迫られていたりするイベントもあったりするんですから、なんとも賑やかな作品と言う事が出来るようです。
そして、科学の光が当たる作品の例に漏れず、科学の暗部が抉り出される展開へと怒濤の勢いで流れていきます。血も涙もないような、いやまさしく科学を突き詰めるために「箍の外れた」狂気を発揮する科学者達の物語に、主人公達は飲み込まれていくことになります。
しかしいずれにしても彼らは科学者であり、最初の問いかけに戻ってくることになるのです。つまり「特異領域とは何が生み出しているのか」という謎です。喜怒哀楽を含む紆余曲折はあるものの、この作品は意欲的な学生科学者が世界の謎に迫ろうとする探求の物語なのですね。そしてその謎は最後の最後に僅かながら、主人公と彼らを追いかける読者の前に姿を現してくれるのです。

総合

うーん、星4つ・・・にしておこうかな。
そもそもSF好きだったり、オリジナリティ溢れるSFマインドによって作り出された妙な理屈に振り回されてみたい! という人はライトノベルですけど買って損は無いと思われます。私の場合はあとがきのこの一文に惹かれて内容の確認もそこそこにレジへと持っていきました。

難しすぎてわからないという意見にも、簡単すぎてつまらないという意見にも、その他諸々に対しても決して言い訳はしません。原稿の向こう側にいる読者の方々の心をこじ開けられるように精一杯の努力をしました。決して手抜きのない全力の作品です。

本の世界の「そとがわにいる」我々読者に対して、物語の作り手は自らを作家という「特異点」に変えてまで手を伸ばしてきたという訳です。このブログを昔から読んでくれている人にはこういった方がわかりやすいかも知れません。この本はかつて私が望んだ「ライトノベル作家の渾身の一撃」であると
さて読者であり観察者でもある我々はどういった反応をするべきなんでしょうかね――? まあそれはこの本を読んだ読者それぞれが考えてくれればいいと思いますが、こうした意欲的な作品は個人的に大好きなので、悪い点は付きません。小難しい本だとも思いますが、ちょっと気になったら読んでみて欲しいですね。
イラストはsaitom氏です。カラーはともかく、白黒イラストの枚数が数枚と実に少ないのでなんとも言えませんが、作風には比較的合っているのではないでしょうか。まあ絵にし辛い描写ばかりなので映像化には困ったでしょうが・・・まあ、もし続編があったなら、作者の人ともっと打ち合わせして、特異領域をバリバリ使っているところを絵にして欲しいかもとか思いました。

感想リンク

のうりん

のうりん (GA文庫)

のうりん (GA文庫)

ストーリー

舞台は岐阜県である。
岐阜県ってでもどの辺りだっけ? と聞かれて正確無比に答えられる人間がいたら、そいつは岐阜県民か北のスパイか何かなので注意した方が良いと思われる。関東圏の人間からすると

「岐阜? ああ、新幹線で大阪方面に行く時に確か通過するよね? 静岡と……名古屋の間だっけ? いやその向こう?」

となる可能性が大なあの岐阜県が舞台である。日本人がどの位日本という国の地理に疎いかという点についてはこのサイトに詳しいのでそちらを参照して頂ければと思う。これが意外に笑えないところが怖い。
とまあそんな土地が具体的に指定してある状態で始まる希有なライトノベルの登場である。何しろ農業高校が舞台になっているおバカお色気学園農業ラブコメディである。もうハイパーファームクリエイターとか、そんな感じの怪しい職業という感じで認知されるべきかも知れない新しい地平を切り開いたラブコメである。
ちなみに主人公は畑耕作(はたこうさく)という名の、ガイアと農業に愛されたまさに大地母神の愛を一身に受けた少年であるが、残念ながら母の愛が偏りすぎていたために少しばかり変態であるという致命的な欠陥を抱えている少年である。が、大地の愛に包まれて育ったお陰で今のところは手が後ろに回らずに済んでいた。
そんな耕作が幼馴染みの少女の中沢農(なかざわみのり)や過真鳥継(かまとりけい)という知的メガネとつつがなく学園生活を送っていたところに、何故かTVから姿を消した元アイドルの木下林檎という少女が現れたのだった! さあ、一体何が起こるのか!?
っていってもまあ農業するんですけどね。畜産とかもありますね。何気に勉強になってしまったり、何気にハートフルだったりもするし、チチ・シリ・フトモモ、あたりも豊富に取りそろえていますね。農業って……なんか、えっちなのね……って思ったとか思わなかったとか。

これは

キタ。キタよ!
久しぶりにぷるるんっと少ない脳みそが震えるのを感じましたね。開始数ページ目にして、でかフォントでバカらしくも、

「脱柵だぁ――――――っ!」

という文字が躍っていまして、それが一体何を意味する言葉なのか、都会生まれ都会育ちの人間には全く分からないという匂いがイヤが応にも読者を作品に引き込みます。
田舎に行った時にこのような警告が突然聞こえたら一体どうするべきなのか? そもそもATOK先生を持ってしても一発変換出来ない(造語でもないのに)言葉を警告として使うことに意味があるのん? とか思わなくもなかったりする訳ですが、まあそのあと聞こえてきた鳴き声が「メェェエエエエ……!」とかだったらまだマシで、「ブモォオオォォォォオ……!」だったら……、ほら、牛追い祭りってありますよね? あれな感じです。

まあ冗談ですが

農業は、ディープだ、と関根勤が間違いなく言ってくれるレベルで奥が深いのは間違いないですよ農業。腐った脳みそでねじ捏ね回した魔法的な設定なんかよりよっぽど奥深くて理にかなっていて歴史があるのです。
じゃあなんでそんな魅力的な題材をメインに据えたライトノベルがなかったんだって話になりますが、まあなんでですかね? 格好良くなさげなんですかね? 田舎コンプレックスとかもあるんですかね? いやあるんじゃないですか私も田舎育ちでどう考えてもラブホテル行くよりその辺に車とめてチョメチョメする方が理にかなってるだろという土地の生まれなので都会生まれ都会育ちの人間に会うと理由の分からない憎しみがこみ上げたりします。
あ、何の話してたんでしたっけ? そうそう、田舎って何気にアレだよねって話でしたね? 謎の匂いを発する物体が牛糞の固まりだった時の衝撃。養鶏場から漂ってくるあの目と鼻粘膜に染みる悪臭にはクーラーのなかった子供時代には随分と泣かされたものでした。朝シャンとかしたって無駄じゃんよ? とか思って吹っ切れた少年(過去の私)がいたとしても誰が責められるでしょうか?
あれ? これ何のための文章でしたかね?

とにかく

バカばっかりですが、バカで変態なりに面白く真面目でいい感じの話に仕上がってます。
主人公の耕作はアイドルの草壁ゆかという少女に入れ込んでいて、抱き枕カバーを自作した挙げ句にその中にくるまれて眠るという重度のアレですが、ツッコミ属性も持っているマルチプレイヤーです。大抵の事には耐性があるという見事な主人公属性を持っているし、あれやこれやと既存のネタを散りばめてくるので侮れません。作品中盤では岩明均がお気に入りだったようです(作者が)。
ありがちな幼馴染みの農はシリがでかいという俺好みのキャラなので一押しですが、時々どさくさに紛れて黒こげにされたりとか主人公のキン○マを蹴りつぶそうとしたり出来るやっぱりマルチプレイヤーです。なんなんですかねこういうキャラ。結婚したら自動的に子だくさんになってしまいそうな感じがバッキューン!ってキます。キまくりやがります。しかも普通に方言しか喋りませんのでそれがまた萌えンだっつーんだよォ!
メガネ美形少年の継は一見まともそうですが、下ネタに平然と突き進める才能を持ち、同時に何気に体育会系で細マッチョな攻めも受けもいける知的万能型です。言うなればこちらもマルチプレイヤーです。脱ぎ癖があるような気がするのは私の気のせいなのか何なのか分かりませんが、一発芸のためだけにタマゴを直腸に仕込むのはヤメましょう。
序盤から登場して、主人公たちのライバル学科(畜産)に所属する縦ロールでも違和感なさげなお嬢様キャラ+巨乳であるその名も良田胡蝶(よしだこちょう)は何故か作業着の似合うツンデレです。マルチとまではいきませんが将来有望です。若旦那というワラビーがセットで付いています。
ベッキーはあだ名ですが教師らしいです。淫乱アラフォー女教師で、全身に美容オイルを塗りたくった挙げ句、調子にのってサラダオイルまで塗りたくってM字開脚でセルフヌードらしき写真を撮っていた時にふと我に返って死にたくなったりするそうです。喪もこじらせると死因になり得るという実例ですね。
そして木下林檎がくだんの転校生です。元アイドルと思われますが一体何を血迷って芸能界を抜け出し、田舎の農高になんて来ることにしたのかさっぱり分からない謎めいた少女です。が、あからさまに耕作に気があるところをみると何か色々ありありそうです。アイドル時代に大ファンだった耕作から大量のナスやキュウリを送りつけられていたという事実があるのですが(耕作としては健康に気を使った結果だったらしい)、それによって間接的に性に目覚めた可能性も否定できません。

総合

いやあああぁあぁん! という訳で星5つう〜!
なんですかねこのトキメキ! 最初に「バカテス」を読んだ時の「キタコレ!」という感じに近いといえば伝わりますか? しかもこちらはパクってないので安心です。あちこちに散りばめられたオタク的ネタと、作者が無駄と思えるほどに心血を注いでしまったっぽい農業の現場取材の結果が反映されて、混ぜてはいけないと思われていたものが混ざってしまったという、かつて遭遇したことのない「農星からの物体X」としてこの世に爆誕しています。これはマストバイですね! 読まないと損なんじゃねえかな!? な!?
とりたてて大きな事件が起こったりもしませんし、地球のピンチも日本のピンチもありませんが、食糧自給率の著しく低い日本に属する我々は農業の事をもっと知っておくべきなんじゃないの? と思わせると同時にバカらしくてエロくて可笑しい、しかも最後はちょっとハートフルに締めてくれるという贅沢な作りになっていますので、見かけたら手に取ってみるといいんじゃないかな!
イラストは切符氏です。これがまた良かったですね。作者と編集と絵師が一緒くたになってバカらしくも楽しい本を作り上げてやろうじゃないか! という意気込みが感じられる絵が実にいいです。見開き絵があったり、ページ上に配置してあったり、何故かビキニアーマーを身につけたヒロインたちの絵があったりと、意味が分かりませんが楽しいです。是非次もこの調子で頑張って欲しいですね!

感想リンク

さくら荘のペットな彼女(4)

ストーリー(特に変えてないです)

水明芸術大学付属高等学校に通う神田空太は、さくら荘という下宿風の学生寮に住んでいる。キッチン、ダイニング、風呂が共同という古式ゆかしい物件だ。ただしこのさくら荘、学校では悪名高い方で有名だった。とにかく問題児とされる人間だけが集められているからだ。
空太の場合は拾った猫が捨てられないために以前住んでいた寮を追い出されたのだったが、他の連中はひと味違う。芸大付属というだけあって特殊な才能を持った生徒が少数精鋭という感じで入学してくるのだが、それらの一部が揃いもそろって人格破綻者だったのだ。才能は溢れているけど普段の行動に問題(警察にやっかいにならない方向で)がありすぎる生徒が集められているところ――それがさくら荘だった。
奇人変人の集まったさくら荘を出て行くというのが空太の目下の目標だったが、奇妙な隣人たちとの暮らしの中でその目標も少しずつ変わっていく。特に新しくさくら荘に入居してきた椎名ましろとの出会いは空太の毎日に確実に変化を加えていた。
ましろは画家としては国際的に認められている天才であったが、ましろは絵画の道を放り出してまでして漫画家になりたいのだという。それだけでも充分にとんでもない事であるのに、日常生活を送ることにかけてましろは何一つとしてまともに出来ない無能力者であった。
そんな状況の中、空太はなし崩し的にましろの世話を押しつけられることになってしまう・・・。パンツを選ぶことから髪の毛のドライヤーかけまで、十代の少女とは思えない距離感で無自覚に近づいてくるましろにタジタジになりつつも、なんとか学校生活を送る空太だったが、ましろの一心不乱に漫画家を目指す姿に色々と感じるものもあって・・・という感じの青春学園ストーリーの4巻です。
全巻が文化祭に出品するものを作る回だとしたら、今回は文化祭そのものの話ですね。

3巻の

ほぼ翌日くらいからのスタートというか、この話くらいスケジュールがタイトな作品もそう多くないと思います*1
本当に青春はイベントの発生密度が半端ないですね。・・・というかこういうのがリア充って言うんじゃないでしょうか? なんか分かんないですけど今にして思えば浪費以外の何者でもない時間を過ごした記憶しか持たない事が少し寂しい私です。というか友人と協力して何かをやり遂げた経験なんてあったかな・・・。
まあ仕事をするようになってからはいくらでもありますけどね、でもそれってやっぱりお金という利害関係の絡むなかでやり遂げるのとは全く違う何かのような気がするし・・・。やっぱりこうね、若い時はね、タイホされない程度にはヤバい事とかもやっておいた方がいいかもしんないですが、別にこの本の内容とは特に関係ない愚痴みたいになってますええ。すいません。
そういう事を思い出させる程度にはこの本が昔の痒い古傷みたいなものをサワサワと撫で回してくれる事は間違いないって事です。・・・ナニ? あンたライトノベルを毎日のように読みまくってンだから、そんな古傷しょっちゅうゴリゴリと削られてるンと違うんかい、ですって? いやいや実際そうでもないですよ。特殊能力や怪異の類を挟まずに、現代の普通な少年時代を描いているラノベって少ないんですよね。うん、意外と言えば意外だ・・・というか俺が読んでないだけかな?

ともかく

読んでいて色々な出来事がちゃんと進んでいくのが気持ちいいですね。
終わりを伸ばすことも考えてある程度牛歩戦術的な事はやっているんでしょうけど、それでもちゃんと期限を区切ってイベントを発生させて、人間関係をちゃんと動かそうとしているところには好感が持てます。ダラダラとページを消費して、何も変わらないまま話が終わるとか勘弁して欲しくないですか? 終わりが全く見えない話の続きを読み続ける気力が萎えつつある私です・・・ってこれは前からか。
とにかく空太はもちろんですが、ましろも明らかに変化していますし、七海もそうです。それにこの話ではっきりと変化をしようとする美咲とかは特にいいですね。キャラクターとしてはあまり好きな部類のキャラじゃないんですけど、美咲は仁との絡みが増えると凄く魅力的な――つまり人間的になるってことですが――少女になりますね。彼らの変化は必ずしも彼らに幸せを運んでくる訳ではないんですけど、単に「楽」や「幸」に流れようとしないキャラたちの若さが眩しいです。
この4巻では、そんな彼らの姿を唯一と言っていい大人のキャラで、今までただの役立たずだった千尋先生が簡単に総括してくれています。

「神田はまだまだガキなのね」
「悪かったですね……できれば、どの辺がガキなのか、教えてくれるとありがたいです」
「世の中全部を白と黒にわけないと気が済まないところよ。白と黒にわけることが、わけられる人間が、大人だと信じているとこ」

おお、教師らしい発言を一切してこなかったキャラクターが比較的まともなことを! なにかに目覚めたんですかね?
それはともかく、個人的には「ガキ」という単語で人間をひとくくりにするのが大嫌いな私です。ガキはガキなりに苦しむものですし、ガキの至らないところが大人の至らないところより「ガキかどうか」なんて一体誰に分かるって言うんでしょうかね? ガキって言う人間がガキじゃないという事を誰が証明してくれるんでしょうか?
なんて事を真面目に考えてしまう辺りが「ガキ」ってことなんでしょうけどね。いやあ、私いつになったら大人になるんかなあ・・・。ともかく、空太も馬鹿にしたモンじゃないですよね。

総合

そんなに長中と書けばいいってもんじゃないとか思うのでまとめに入りますけど、星4つですよ。
綺麗に進んでいるし綺麗にまとまっているし綺麗にライトノベルだと思います。ある意味で青春ラブコメディの教科書のような一冊に仕上がっています。変に刺激的ではないですが、適当に読み飛ばすわけに行かない青春の「傷」と「癒し」が物語の中に織り込まれているというか・・・そんな気がした一冊でした。
ラスト近くでは色々な事が一気に起こるので、今後の展開がどうなるのかという意味でも目が離せません。どうやっても不器用にしか生きられない少年少女の姿って、どうしてこんなに羨ましいでしょうね? キャラクターたちの苛立ちはもう遠く過ぎ去ってしまった出来事のように少ししか苦しくない代わりに、彼ら彼女らに対しての愛おしさみたいな気持ちが強くなるのを感じます。うーん、甥とか姪の成長を眩しく見守っているような感じとでもいいますか・・・上手く言えませんけどね。
イラストは溝口ケージ氏です。パッとはしませんがこれはこれでまあ味があるような気がするな・・・という印象に変わりつつあります。でも改めて見直してみると、本当・・・大したことないイラストが並んでますね・・・絵の描けない人間がこんな事言っちゃいけないような気もしますけど、まあ本音です。もうちょっと絵の中の感情表現に幅があればいいと思うんですけどね・・・。

*1:いや、禁書とかももの凄い短い期間で大量の出来事が起きたことになってましたっけ?

…………。

寒いよ!!
天気の変動が極端すぎるんだよ!!
固い石だって熱したり冷ましたりを繰り返してるといつしか砕けて砂になっちゃうんだよ!? 砂が入ったら痛いでしょ!? 砂浜でナニするのにはそういうリスクもあるんだよ!? だから暑かったり寒かったりを数日の単位で行ったり来たりするのは止めて頂けませんか? 勘弁して下さい。イヤ本当に勘弁して下さいませませ。
……良く分かんないけど気候変動が原因の疲労が体の芯に響いてくるのを感じちゃうなあ……ってやっぱトシなのかなあ……まだこんなに元気なのに……。

ところで

エロマンガで種の保存本能がどうのこうのといいつつナニするのってありがちですけど、本当の所を言うと熱とか出てる時って流石に勃たないよな! いや勃つことは勃つけど、なんだか普段よりちょっと柔らかいよな!?
いやちょっと風邪気味なもんでね、さしもの愚息も今日はちょっと元気がないんでござるよ。うん、相変わらず下品ですみません。

魔法科高校の劣等生(2)入学編<下>

魔法科高校の劣等生〈2〉入学編(下) (電撃文庫)

魔法科高校の劣等生〈2〉入学編(下) (電撃文庫)

ストーリー

魔法という存在が科学的に解析され、才能のあるものであれば教育によってその能力を伸ばすことが出来るようになった未来世界。
そこには「魔法師」としての将来を嘱望されるエリートたちが集う教育機関があった。国立魔法大学付属第一高校。通称「魔法科高校」。司波達也(しばたつや)と司波深雪(しばみゆき)はこの春からその「魔法科高校」に通うことになった兄妹である。しかし、兄は補欠の「二科生」、妹は成績優秀者として「一科生」としての入学だった。
ただ、兄に心酔する妹の深雪はその事実が気に入らない。本当に優秀なのはお兄様の方なのに――。そんな憤懣やるかたない気持ちを隠そうともしない妹に対して、兄の達也は苦笑しながら深雪の頭を撫でてやるのだった。そうしてやれば怒っている妹はまあ、満足げな顔をして一時的には大人しくしてくれるのだ。
しかしなし崩しと言うべきか、兄の達也は時として魔法に対しての実力行使すら必要とされる風紀委員としてスカウトされ、妹の深雪は生徒会に参加することとなっていた。そして、入学早々と言っていい時期にもかかわらず、達也は既に学内での有名人になりつつあった。まず一つには、二科生からの異例とも言える風紀委員への抜擢、そしてさらにはトラブルを起こした生徒を多対一で叩きのめしたという戦闘能力の高さを妬んだものだった。
切っ掛けとなった暴力事件はある意味で魔法科学校としては些細とも言えるはずの出来事だったが、いつの間にか学校外部の勢力を巻き込んだ事件へと発展していく。そしてその渦中には司波兄妹の姿があったのだった・・・。
という感じで上巻から続いての下巻です。

うーん・・・

期待はずれというのが本音です。
いや、世界観は魅力的ですし、主人公を取り巻く状況も入り組みつつも説明が丁寧で良い感じです。・・・なのになんですかねこの面白くない感じは。つまらない、ではなくて、面白くないというのが語感的に近いとか個人的に思うんですが、どうでしょうかね。
とにかく強烈に感じるのは主人公を含めた登場人物たちの魅力の無さです。特に主人公、若者らしい魅力が全くないですよ。まあ、「クールでイケてて頭もいいし強い、でも本人はそんなこと鼻にもかけない」という感じのアリアリの主人公が大活躍する作品が読みたい場合には全力でおすすめしたい所ですライトノベルを読む動機の中にはそういう気持ちがなくもないでしょう?)が、そうでない場合は避けて通るべきです。
読んだことある人にしか通用しない説明ですが、秋せつらを中高生向けライトノベルで半端にリメイクしたらこうなったという感じです。つまり「全く可愛げがありません」。まあ別に可愛げがあればいいってもんでもないですけど、なんかもうちょっと人間的な隙を作ってくれないと愛せませんねこの主人公。少なくとも大きなお友達(私の世代って事ですが)受けはしにくいんじゃないかと思います。
というかタイトルに「劣等生」と付いていますけど、それを読者に感じさせる部分がほとんど無い所がまた微妙です。作中の登場人物は達也が「劣等生である」という事をある程度納得出来るのかも知れませんが、物語を俯瞰で眺めている私からすれば、ちゃんちゃらおかしいですね。だって、達也くんイケメンでチョー優秀なんだもん!

まあ

主人公だけじゃないと書いたとおり、他の登場人物も総じてそんな感じです。
強いて言えばヒロインの深雪は重度のブラコンが目立つので魅力があるかな? と思うくらいで、後はイマイチですね・・・。西条レオンハルト千葉エリカといったクラスメイトは上巻から登場してきていますが、西条の方はどうもふわふわと印象が定まりません。口が悪いと言うことだけは確かなようですが・・・。
またエリカの方は気がついたら敵とチャンバラを堂々とやっていたりして(作中ではそれなりに裏もあるようですが)、なんだか突然表舞台に出てきたという印象が拭えませんでしたね。というか私闘が平然と認められる状況なら、風紀委員とかあろうがなかろうがどうでもいいんじゃ? とか思ったんですけどその辺りはどうなんすかね。
まあそうした展開も作中に隠された背景によって正当化されるのかも知れませんが、そこまで追う気持ちになれません。ライトノベルというのは多かれ少なかれご都合主義に満ちているものですが、この作品は「作者が気持ちよくなるためのご都合主義」が多すぎます。ご都合主義でも「読者を気持ちよくするためのご都合主義」なら許せるんですがね。
所詮は「Webで趣味で書いていた作品」だな、とか思いました。3000万PVって凄い数字だと思うんですけど、このブログで星に換算すると・・・?

総合

3000万PV=星3つです。
いくら数字をたたき出しても商業ラインに乗っていない数字は参考になりませんね・・・というのが今回はっきりと分かったことでした。まあもちろんこの物語を楽しく読む人も多くいるんでしょうが、私ははっきりと「面白くない」と言いたいですね。少なくとも、一冊500円以上の価格を取ることが出来る内容だとは思えませんでした。そうですね・・・200円くらいが妥当な価格設定じゃないでしょうか。
映画で言えば劇場で観させられたら不満たらたらになりますが、レンタルDVDなら新作価格でもまあアリじゃないか・・・? という所でしょうかね。だから「つまらない」とは言いません。良く出来ていることは良く出来ているからです。ただそれは=「面白い」ではないという事です。少なくとも、私にとっては。
逆に、高く評価したいのが石田可奈氏のイラストです。丁寧に描かれたカラーイラストはもちろんですが、作中に挿入されている白黒イラストの表現の多彩さは最近余り見ないレベルに達していると思います。凝った構図の絵があるかと思えば、漫画的なコマ割を利用した多角的な人物の描写があったり、あるいはコミカルな表現を使用していたりと見る側を飽きさせない努力、作品を面白く切り取ろうとする意欲をビシビシと感じる絵が多かったです。今後もこの調子で頑張って欲しいですね。

ゴールデンタイム(3)仮面舞踏会

ストーリー

普通は遭遇しないような青春の紆余曲折(酒臭かったりキレたり飛びついたり)というようなまさに「すったもんだ」の挙げ句、晴れてお付き合いをすることになった多田万里加賀香子の二人。
なんだかんだで幸せなので頭がハッピー状態になっている万里には、普通の男がドン引きする程の濃い愛情表現を出来る女の香子の強烈な攻めでも余裕で受け入れてのラブライフを楽しむだけの余裕があった。人生春真っ盛り・・・のはずである。
万里がどこか冴えないとするならば、その理由は一つしかない。林田奈々、つまりリンダとの関係である。
今の万里のの知らない「過去の万里」との間になんらかの強い結びつきがあったことを証明するだけのものが出てきてしまったこともあって、万里はリンダを責めてしまった。自分のことをまるで知らない人に出会ったかのように振る舞うのは何故ですか。それじゃあ「失われた万里」が可哀想すぎる・・・と。
しかし万里はすぐさまこうも思ってしまったのだ。最初にそれをやったのは自分なのだ、という事を。記憶をすっかり失ってしまい、親しい人たちに対して先に「あんた誰?」とやったのはまさしく自分なのだと。
そうして多くの人と自分を同時に傷つけて、どうしようもない辛い思いを抱えたままリンダの元を逃げ出した万里を救い上げたのは、香子の馬鹿みたいに一心不乱な愛情だったのだった。そうして二人は――付き合いだしたのだ。しかしだからといって万里とリンダの間に残されたしこりが無くなる訳ではないのが、青春の難しいところだろうか・・・
いつ爆発するか分からない不穏な地雷があちこちに埋まったまま、一見幸せそうな万里の大学生活は続く。彼らの行く先に待っているのはどんな結末だろうか・・・という感じで続く、ドロリドロドロ青春ラブコメディの3巻です。

うひぃ

いよいよもってきな臭いというかえげつないというか、やりきれない展開になってきてしまって私もうドキドキです。
幽霊の万里も、今の万里も、香子も、リンダも、おまけで言えばやなっさん&岡レシアも、それぞれの事を考えるとなんだかもうどういう所に自分をはめ込んで読み進めたらいいのか良く分からなくなってしまうという状況です。
誰か一人か二人位に嫌いなキャラや悪人をはっきりと作中に用意しておいてくれれば、俺もそれに応えて心の鬼平を呼んで切り捨て御免をかませばいいので楽ちんなのですが、たけゆゆはそういう部分で甘くありません。仮にまともな裁きが行われた場合、江戸時代でも最高裁判所までもつれること確定という位にもつれまくった案件です。
個人的には・・・そうですね、今のところ「今の万里」と「香子」が救われて欲しいという気持ちがあります。今の万里と香子だけが何も知らずに苦しんでいるように思えるからです。・・・まあ、じゃあ知っているからこそ辛いって事もあるんと違うかとか言われたら、確かにその通りなので勘弁して下さい。決断が鈍ります。

ところで

今作はやっぱり大人っぽいですよね。
万里や香子もそうですが、まあ恋人だということで、そのまま進展していくと自然と出くわすことになるであろうイベントのアレとかが作中で普通に出てきます(まあ匂わせる描写に留めてますが)。香子に言わせるとパリに行かないとダメらしいですが、無事に行き着いた暁には香子さん曰く、

「悩殺するから」

だそうです。しかもラ・ペルラとか着てくれるそうです。・・・おうおうおうお前ら、ラ・ペルラってなんだか知ってっか!? 海外ブランドの一流下着メーカー(詳しくはリンク先参照)だぞこの野郎! 日本でも新宿伊勢丹とか行くと売ってたりしますが、あれはもうなんですか、布だけどレースってつまり糸でもあるよね! という感じで、色々と恵まれた女性が着たりすると破壊力が凄いヤツです。マジヤバイですよ。
・・・いや自慢じゃないですけどうちの奧さんが上下キャミと1セットここのシリーズ持ってましてね・・・たまに着てくれるんですが・・・ああいうものを身に纏った女性というのはですね、危険物取扱主任とかの免許持ってないと逮捕されるんじゃないかとと思うわけですよ。男と女のどっちが逮捕されるのか分かりませんが、「つ・か・ま・え・た」とか言われると、興奮しすぎて確実に脳細胞の幾ばくかは死滅しますからね! う、ううううぉおぉぉおおおおおおおおお・・・・!(吐血)

まあいい

そういう話をしたいわけじゃないんだ・・・!
下着がどうとかっていうサービスっぽいアレなんか霞むぐらいにこの話が濃いんだよという事が結局のところは言いたいんですよ。この3巻改めてクローズアップされるのはリンダであり幽霊の万里です。昔の万里とリンダが一緒に体験した出来事とかが効果的に差し込まれているので、嫌でもリンダや幽霊万里に感情移入してしまいます。
少しも完璧じゃない彼らですが、だからこそ余計に報われて欲しいなんて思ってしまいます。今の万里が苦しいのと同じに、あるいはそれを越えて遙かに失われてしまった彼らの時間が悲しいのです。しかしだからといって今の万里の喜びを否定できるようなものではないという事は、恐らく読者全員が共通で持つことになる認識でしょう。誰か全てが丸く収まる方法を用意できないものでしょうか。
2巻では今の万里がパンクしました。そしてこの3巻では香子が何かを切っ掛けにパンクしつつあるように思います(おおよその想像は出来ますが)。そうなると次はリンダとなるのが順当な展開かと思いましたが、ラストシーンを見るとどうやら一筋縄ではいかないようですね・・・。どうなるんだこの話。

総合

星5つだろキサマ。
大学生を主人公にしてリメイクされている「わたしたちの田村くん」とも言えそうなこのシリーズですが、タイトル通りにちゃんとした「ゴールデンタイム」と呼べる作品になってくれることを祈っています。今のまま状況が逼迫していくと、いつかどこかで取り返しのつかない悲劇が襲ってきてしまいそうで少し怖いというのが今の本音です。こういう不安感は「とらドラ!」の時には感じなかった類の感情ですね。
それにしても・・・人を本気で好きになるというのは素敵な事ですが、同時に同じくらい苦しいことだというのを久しぶりに思い出しましたよ。自分が好きな分だけ相手にも自分を好いて欲しいと思ってしまうのが人間で、この本の登場人物も、そして読者もそういう部分は全く同じなんですよね・・・だから読者も作中の登場人物と同じように苦しいと感じるし、同じように幸せに浸ったり出来るんだなあと思うんです。やっぱりゆゆぽりんの書く話は心の機微の描写が素晴らしいと思うのです。
イラストは相変わらず「お前はなんか反省しろ」駒都えーじ氏です。2巻に比べればマシな気はしますが、カラーイラストに描かれたリンダ(&万里)の、のっぺりとした笑顔はどうにかならんかったのか、と言いたくなりました。他にも、野郎キャラ(万里とか)の何を考えているのかよく分からない微妙な笑顔が本当に気に入りません。なんか微妙な心境を絵にするという領域での表現力って意味で終わってませんかこの人。
・・・つーかたった今ふと思ったんですけど、本文と挿絵の関係がしげの秀一氏による漫画「頭文字D」とアニメの関係に近いんですよ。静止画の漫画の方がなぜかスピード感があるという謎事態になってましたもんねあの作品。イラストが文章の表現力を超えられていないんだと思います。

ゴールデンタイム(2)答えはYES

3巻の感想? 明日にはアップしたいですよ!?

ストーリー

大学入学直後から幾つかの人生の岐路(選択ミスでデッドエンドあり)に直面しはしたものの、なんとか生還することに成功した何の変哲もない若者であるところの多田万里(ただばんり)は、今まさに女性におつきあいを申し込んだ挙げ句の果てに断られていた。
その相手は何を隠そうあの加賀香子(かがこうこ)。ゴージャスで完璧な外見を持ちながらもあれこれと大変な性格のお陰で長年懸想していた相手の柳澤光央に絶縁状を叩きつけられた程の女性である。
万里が一体何を思って香子に告白するに至ったのかはまあ色々あるのだが、告白に失敗したからと言って人生が終わるわけではなかったし、自分の人生から香子が消え去ってしまうわけでもなかったので、万里は大学で今日も香子と会っていた。いわゆる一つの――お友達として。
万里のそんな行動には少しばかりの期待も混じっていたかも知れない。友達とはいえこうして時間を積み重ねて行けば、いつか何かが生まれてもおかしくないんじゃないか――そんな気持ち。でも、それをぐちゃぐちゃにかき混ぜるような気持ちが無いわけでもない。サークルの先輩でリンダこと林田奈々と万里の間には、記憶を失ってしまう前には大切だったと思える繋がりがあったことを知ってしまったからだ。でも今は――ない。消えてしまった。自分の失った過去と一緒に。リンダもそうなのだろうか? 分からない。
そうして香子に振られながらも答えの出ないあれやこれが頭から離れない万里。でも大学生としての暮らしは続く。過去を失ったままの万里の暮らしも続く。この先もずっと? ――答えはYES。
コメディの皮を被った猛烈シリアスで読者の心をちょい抉る、ライトノベルとしてはちょっと大人びた青春ストーリーの2巻です。

これを書かないと

必然的に3巻の感想が書けないので、今の私はちょっと必死です。
いや別に2巻をキングクリムゾンばりにすっ飛ばしても平気なんですけど、はっきりとケツの座りの悪さを感じてしまったのでこうしてたしたしとキーボードを叩いているという訳ですよキミ。嫌々という訳じゃないのになんだか苦しい作業ってあるんだなって事を今しみじみと感じている最中です。なんなんですかねこの妙に煮詰まる気持ちというか、締め切りに追われているという感じ。プロでもないのになんなんだ。多分その辺りの何もかもがたけゆゆのせいだと思うので、痩せる呪いとかかけておこうと思ってます。
いやそれほど分厚い本でもないんですけど、もの凄い中身が動いているんですよ2巻は。だから最新の3巻の感想を書くつもりなら2巻の再読が避けて通れない(クソ忙しいのに)訳でして、だったら感想だって書いちゃえばいいじゃんかさという結論になるのは当たり前の花品分けです。まあ少なくとそう思える程度にはこのシリーズが好きってことでもあります。

うん

とらドラ!」とは全然違いますけどね。好きなモノは好きですよね。
変な言い方ですけどたけゆゆと同じ時期に同じ大学とか行ってたんじゃないかと思うくらいに、自分が過去に体験していた出来事をなぞるような出来事が作中で連発されるので、本当にもう万里が他人って気がしません。いや万里みたいに女の子とのイベントは多くなかったですけど、それでもまあ色々と盛り上がったり盛り下がったり、馬鹿騒ぎやら乱痴気騒ぎに興じた時期もありましたわな、という事な訳です。
胃がねじ切れるような辛い思いをしたのも大学生の時でしたが、世の中がピンクに見えるほど素敵な出来事があったのも大学の時でしたしね・・・さようならと、こんにちわの、両方が満遍なくあの時代にはあったのですよ。だからとても優しかったし、とても残酷でした。明暗のはっきりした時間は年輪のように自分の中に残り、今の自分を支えています。

まあ

自分語りを繰り返してもうっとうしいだけなのでこのくらいにしますが、とにかく読ませますよ。
実は作品としては何気に大人っぽいので、ちょっとえぐさを感じる瞬間が多々あります。傷つけたり傷つけられたり、必ずしも好きになれそうにないような行動を取ってしまうキャラクターが出てきたりと、アクという意味では前シリーズよりずっと強くなっていると思います。
主人公の万里だって間違っても聖人君子ではないし、後ろ暗いと思う過去が無いわけでもない。特に記憶を失ったという事実はこれから先も彼の前に暗い影を落とし続ける事は確実だと思うのです。もちろんそうした秘密は香子も持っているでしょうし、リンダもそうに違いありません。
でも何でしょうか、それでも好きなんですよね。いや、それだから好きなのかも。どうしたら良いのか分からないことだらけで、自分の殻だって簡単には壊せなくて七転八倒する主人公たちの姿は、本当に今までのどこかで自分も出会った事のある瞬間を見事なまでに切り取っていて、目が離せないのです。美しい被写体だけを写真にしたものが評価されるわけではないように、青春のやりきれなさを少しの笑いと一緒に切り取ったこの作品には、他にない美しさがあると感じてしまうのですね。

総合

星5つですよ。たけゆゆが好きなのは確かですけど、それだけじゃないんですよ。
彼や彼女は私なんです。そう思えてしまったらもう悪い星は付けることが出来ません。それは身びいきというものではなくて、何というか・・・いつだって思い出は美しく見えてしまうものでしょう? 苦しい悲しい辛い、そんな言葉無しで語れない時間が沢山あったことも確かです。でも、遠く過ぎ去った所からそこを見てみると、あちらこちらに小さな宝石が転がっていることに今気がつく――そんな気分なのです。
だから彼らを否定することは、今始めて見つけた宝物をただのゴミに戻してしまうことのように感じるんです。なんかこんな事書いていると「何言ってんだこの野郎?」とか思われる可能性大だと思いますが、まあいつも通りのほどよい電波が出てしまったのだとか思ってご容赦下さいね。まあなんですか、この悪文をここまで読んでくれたキミなら許してくれると信じております。
イラストは「なんでお前が絵を描いているんだ」駒都えーじ氏です。悪くないなと思えたのは白黒で一枚くらいで、あとは作品との乖離の激しいつまらない絵ばかりでしたね。この人一体何が評価されている絵師なんですかね?