ライトノベルの文体?ネタについて

GOD AND GOLEM, Inc. -annex A-さんで、

ポスト〈セカイ系〉としての『ギートステイト』と、ライトノベル作家の文体についての疑問(改訂版)CommentsAdd Star

古典文学を読む私のライトノベルに対する〈読み〉そのものがスタイルとして古いといわれればそれまでですけれども、もし実際そうだというのであれば、どのような〈読み〉であればあの「物語専門新聞記者」のような文章を楽しく読めるのが、大変気になっています。

と、いう内容がエントリの一部に書かれたのが切っ掛けですかね。もの凄く濃く文章を書かれる方のようですね。

で、まいじゃーさんですが

このエントリに反応しして、ライトノベル作家の文体と言うエントリで、

ぶっちゃけ文章に酔いたいなら、ライトノベルに時間割く必要はないというかむしろ期待しても不幸になるだけでしょうね。

とコメントし、他のブログさんも意見を積極的に提出してどの意見も面白い事になっています。

現在

あちこちから意見が出ていて面白いのですが、取りあえず混沌としているっぽいので、「捜査に行き詰まったときは現場に戻るのが基本だ!」という事で上にリンクを貼った二つのブログのエントリだけ注目して考えてみます。

この二つのブログの文章をそのまま比較して読んでみれば少なくとも「アナタが楽しく読める文章」は分かるんではないかと思います。

  • GOD AND GOLEM, Inc. -annex A-さんの書いているエントリが読みやすかったし、また分かりやすかったというアナタ

ラノベは向いてないかも。

  • まいじゃー分室さんが書いているエントリが読みやすかったし、また分かりやすかったというアナタ

ラノベを読んでみるといいかも。

私は二つのエントリをこう読みました

GOD AND GOLEM, Inc. -annex A-さんの文章

私が生粋のラノベ人であるからでしょうが、申し訳ないですが最初「なんて悪文だ・・・」とか思ってしまいました。
ちょっと引用。

サイバーパンクはテクノロジーアイデンティティとの相互影響関係についてはたいへん熱心でしたが、テクノロジーが社会倫理やその中に居る共同体を具体的に、どのように変容させるのかについては、ややステレオタイプで近視眼的なところがあったと思います。

元々の意味を知らないとこの文章そのものが全く理解できません。ちょっと「ありゃー」と思った言葉を抜き出します。

  • サイバーパンク(この単語の意味を説明する事が既に大変です。Wikipediaを読もう。)
  • テクノロジー(科学技術の方が分かりやすくない?)
  • アイデンティティ(使いますけど、正しく、間違える事無くこの言葉の持つ意味を説明できる人どのくらいいるかな?)
  • たいへん熱心(同じ内容を表現できて、もっと聞き慣れた言い回しがあると思う。「とても積極的」とか? というか「たいへん熱心でした」って、なにをしたの? 描写? 説明? 肯定? 批判?)
  • 社会倫理(含まれる概念が多すぎて曖昧じゃない?)
  • 変容(やっぱり口語では使わない言葉ですね。「変化」などの比較的普段から使われる言葉を選ばなかった理由はなんだろう?)
  • ステレオタイプ(書くのは簡単だけど・・・その意味は広い
  • 近視眼的(ニュアンスとして分からなくもないけど、さて、具体的にどういう意味で使ってるんだろう?)

会話で使ったら聴衆の8割を置き去りにしそうな言葉の乱れ撃ち状態ですね。しかし、これらの言葉使いを見ていてしみじみ感じるのが、

  1. 自分の意見を論理的かつ正確に表現しようと努力している
  2. 考えた事を正しく伝えようとするその努力の結果、文章そのものは難解

という事でしょうか。
伝えたい事を論理的に表現しよう」を優先して、「人に分かりやすく書こう」という部分を犠牲にしている文章だと思います。
これが「クセ」という奴なんでしょうな。
正直もの凄く読み辛いですが、頑張ってしつこく読みつづけているといつまでも味が出てくるから不思議スルメイカみたいですね。

追記

こうした論理的な表現を追求するというのは「誰にとっても適用できる《ある種の普遍性》を見いだそうとすること」なのかな〜などと思いました。文章を書くという行為に数学的な美しさを追求しているとでも言いましょうか。「完全な客観性」というものは既に否定されているとは思いますが、可能な限り主観を排しつつ客観的になろうとする挑戦とも言えるでしょうか。

まいじゃーさんの文章

こう言ってはなんですが、まさしくラノベのような文章です。

特に作品を特定はしませんが、需要の問題もあってライトノベルはキャラクター描写と物語に重点が置かれています。
もちろん魅せる文章を書く作家さんだって大勢いるわけですが、そういう方は大抵境界型作家と呼ばれる存在にシフトしていきます。
また、好んでライトノベルを読む層(例えば私がそうです)は、華麗な文章が嫌いなわけではないですが、キャラクターや物語の評価に重きを置いていて、文章については2番目3番目以下になる傾向があります。

気になった単語と言えばエントリ全部を見渡しても、

  • 境界型作家

位でしょうか。
改行も多く、口語での語り口が中心で難解な表現はほとんど出てきません。そもそも意味が曖昧になりがちな「片仮名言葉:外来語」の使用頻度が低いのが分かるかと思います。
文章を見ていて思ったのが、

  1. 論文などで使用されるような言葉は使わないが、意見としては分かりやすい
  2. 単純に読みやすい

という事でしょうか。
つまり「人に分かりやすく書こう」を優先して、「論理的に表現しよう」という部分を犠牲にしている文章だと思います。

つまりあまり「クセ」を感じませんね。事実/意見が端的に述べられている為、文章を良く噛んで味わうとかは多分不可能でしょう。特に内容をこねくり回して考えなくとも理解できるからです。お粥みたいですね。

追記

主観的な表現の仕方が中心なので、「誰にでも通じる何か」を見いだそうというよりは「あくまで個人的見解を述べる事を追求している」ように思います。「自分はこう感じてるよ。あなたはどんな風に思うのかな?」という質問を投げかける方式とでもいいましょうか。そしてそれに反応する他者を全体(群体)を眺める事で、客観的事実をその「群体」の中から見つけようとするアプローチのように感じます。

ラノベを楽しく読む方法?

つまりスルメかお粥かって話なので、料理と同じように、とにかくひたすらいろんな種類を食べてみるしか無いでしょうね。
幸いな事にラノベは最近元気で、色々な味付けがされているお粥が出ているので、そのうち美味しいと感じる作品に会えるかも知れません。
ただまあそこまで苦労してつまらないと感じる本を読む価値があるかどうかは・・・まあ各自の判断という事になりますが、私なら「面白くない」と思った本は読まないでしょうな〜。嫌いなものは嫌いだし、無理して好きになる必要が無いと思うからですけど。
もちろん、この話は「どっちが優れている」とかいう話ではないんですが、理屈抜きで好き嫌いがあるのも確かですね。