AKUMAで少女

AKUMAで少女 (HJ文庫 わ 3-1-1)
AKUMAで少女 (HJ文庫 わ 3-1-1)高階@聖人

ホビージャパン 2007-08-01
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ストーリー

朝目が覚めると、滝沢僚(たきざわりょう)は、隣の家の少女如月ゆり絵(きさらぎゆりえ)になっていた。
さっぱり訳が分からないのだが、ゆり絵によると「悪魔が彼らの魂を入れ替えた」という事を突然聞かされる。・・・仕方がないので彼らはそのまま学校へも行くのだったが、変にウケてしまう二人。心が入れ替わった事で性格に変化が現れて、少年として/少女として、魅力的になってしまったためだったりするのだが・・・。
実は悪魔に心と体を入れ替えさせたのはゆり絵の仕業。腹黒いゆり絵によって事態は混迷を極めて行くのだが、その裏にはゆり絵の僚に対する秘めた思いがあったのだった・・・。

キャラクター:ちょっとしたカルチャーショック

滝沢僚という少年はちょい気弱で内気な少年という事でいいと思うんですが、如月ゆり絵についてはかなりのショックがありますよ。ひたすらツンツンしている少女と言ってもいいのですが、心臓に病を抱えていながらも強気で過ごし、そして僚の事を一心に思いつづけている少女です。
そして、もともと精神的に「負けず嫌い」「根性太い」ところから健康な男の体にはいるとその力強さなどを一気に発揮する事になります。が・・・! びっくりは体が入れ替わった後のその反応!

「うわあっ、おもしろーい。動くーっ、わわわっ。カチカチになってきたっ」

「あ、こすると気持ちいいんだねっ。よーし、ごしごしっと。あー、なんか気持ちいーっ、すっごくすっごく気持ちいいねーっ」

——僚、私のハダカ、観てくれた……。
うれしさがじわっと胸に沁みてきた。
ゆり絵はにまにまと笑った。
——よかったなぁ。魂が入れ替わって、ほんとうによかった。

これは勿論入れ替わった相手の体が「大好きな少年のモノ」だという前提があっての話ですが、好きでさえあれば時々少女は少年以上に大胆になるんだな、と。
・・・というかふと考えてみると、知り合いの女性たちは男の体を初めて見て、ちょっと慣れてくると、いろいろな所が可愛く感じたり、面白くておもちゃみたいにして遊んだ事があるって言ってたなあ・・・。オレもオレも!オレでもそれやってみてくれない!?(魂の叫び)

ところで

如月ゆり絵はオニのような娘でして、男性から見るとまさしく理不尽を絵に描いたような少女ですな。
女性作家の書く剥き出しの少女の理不尽さがこれでもかっ! と噴出しております。そして少女は聖女でも聖母でもない、ひたすらに謎かつ、理解不能であるという辺りが興味深い。
それに加えて、本編内で苦闘を続ける僚とテディベア型悪魔(関西弁)の姿が妙な哀愁がありますな。しかし体が入れ替わった事で結果として相手の気持ちが判るようになり、二人の関係に理解が深まる(ココロもカラダも)という意味では面白いですね。

物語は

へんな百合属性の人にいいよられちゃったり(体がゆり絵/心が僚の時)とか、美少女に告白されたり(体が僚/心がゆり絵)とか、病気の事だとか、不良に絡まれたりとか、いろいろピンチを孕みつつ展開する訳ですが、間違いなく特徴的なのが「この話が少年少女の成長を描いた物語」だという事ですね。

ちなみに

わかつきひかる女史の書く作品の中には、必ずと言っていい程一つの特徴的な言葉が出てきます。

——僕ってなんか、すごいよな。
(お姉さんはサンタクロース)

——僕ってなんか偉くなったみたいだ。
(My妹)

——なんかすごいな。僕。
(ずっと一緒の、恋姉妹)

——知らなかった。僕って、実は凄かったんだ。
AKUMAで少女

上の3作品はジュブナイルポルノ作品ですが、今回のライトノベルレーベルでも同じような意味を持った言葉が登場します。
これはあくまで個人的な想像ですが、女性は自分の力(肉体的/精神的問わず)によって男性が自信を持ったり、元気が出たりするという事に実は深い喜びを覚えるのかも知れませんね。
・・・よくよく考えてみたら、恋愛関係では男側からしても同じか・・・。「ちょいえっちい事」=「いけない事」をしたのに、好きな相手が逆に喜んでくれて、そして幸せになってくれたりしちゃった時の喜びは、想像に(そっと涙)難くありません。

ついでに

当たり前のようにですが、えっちいです。言うまでもない?

総合

星4つ。特に興味深さがブッちぎりです。
なんとも言えない自然な可愛らしさに溢れている少女と、ちょっと自信の無い少年、巻き込まれた可哀想なテディベア悪魔、百合属性の宝塚娘。
妙な笑いがありますが、主人公の少女の性格とか行動は他の作品ではちょっと見ないタイプですかね。ツンデレ、と行ってしまっても良いんですが、それだけに収まらないリアリティに満ち満ちてます。あと、少年が参加する少女世界の異文化交流本としても面白いですよ。
ちょいトンデモ展開もありますが、話全体の構成も良いですな。
・・・強いて欠点を挙げれば、ジュブナイルポルノの出身という事も合って、言葉使いが結構ストレートな所があって、時々「どひゃっ!?」と思わなくもありませんでしたが、それってモテない男が勝手に少女に対して持っている幻想(清楚、純真など)みたいなモンでしょうね。

追記

初わかつき向けの人に一言。
わかつきひかる女史の描かれる作品はたとえジュブナイルポルノであっても男女間の愛に溢れていて、読んで陰惨な気持ちにならない所が素晴らしいですよ?
野郎が書く話の多くはどーも[Chaos-Dark]に偏る傾向があって、時々エグエロくて毒が強すぎ、キャラクターをないがしろにする所が多くてグッタリすることがあるんですが、わかつき作品にはそれが無いのが安心で良いですのな。愛に満ちあふれたセックスの素晴らしさを滔々と語っているとでもいいましょうか。
もしジュブナイルポルノを読んだ事が無くて、コレから手を出そうとしている人は、わかつき作品をお薦めしますね。安心のクオリティ。

感想リンク

まいじゃー推進委員会!  Alles ist im Wandel  MOMENTS  ウパ日記
まいじゃーさんがいち早くチェックしているのが妙に可笑しいですね〜。ちなみにAlles ist im Wandelさんでは珍しく感想を放棄してます。

狙いすぎていて不自然極まりない。

との事。興味深いと思われますので一読をお薦めします〜。